研究実績の概要 |
本研究の遂行により、原発性胆汁性胆管炎(PBC)のCD4+T細胞におけるN-Rasの高発現が炎症性サイトカインの産生を亢進させることが明らかとなった(J Hepatol, 2017)。そして、Ras阻害剤を用いN-Rasを抑制することで、PBCにおけるCD4+T細胞の炎症性サイトカイン産生を抑制できることを示した。 本年度は慢性進行性肝炎の中でPBCと自己免疫性肝炎(AIH)での解析を主に行った。PBCではそのCD4+T細胞の炎症性サイトカインの産生メカニズムを明らかにした。そして、Ras阻害剤はCD4+T細胞のRas活性を制御しこれらのメカニズムを効率的に抑制することを明らかにした。また、前年度に構築したRas阻害剤の免疫抑制能評価のためのレポーター細胞を用い、強い免疫抑制作用を有するRas阻害剤の選出を行うことができた。今後はPBCモデルによる解析を検討している。 また、AIHのCD4+T細胞においてはRas signalの異常は認められなかったものの、IFN-γによるJAK-STAT シグナルの亢進が誘導されていることが明らかになった。これらの知見からJAK-STATシグナルの亢進とAIH病態との関連を解析していく。
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