研究課題/領域番号 |
16K19335
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
河内 隆宏 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (00444282)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | NASH / 肝発癌 / 肥満 / 肝線維化 / 高血圧 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまでに、高血圧・肥満・糖尿病を呈するSHRSP.Z-Lepfa/IzmDmcr(SHRSP-ZF)ラットを用いて、新規の肥満・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)・高血圧に関連する肝発癌モデルを作成した。本モデルは対照群(非肥満・正常血圧WKYラット)と比較し、高血圧、肥満、高血糖、高インスリン血症、脂質異常症を発症するとともに、NASH類似の肝組織像、肝障害を呈することが確認された。この動物モデルは、レニン-アンギオテンシン系(RAS)の促進を特徴とした、ヒトのメタボリック症候群に関連する肝発癌を反映したものであると考えられる。また、7週齢のSHRSP-ZFラットに高脂肪食および四塩化炭素を投与したところ、対照群に比べ著名な肝線維化を呈することが明らかとなった。この肝線維化モデルにおいて、肝前癌病変と考えられているglutathione S-transferase placental form (GST-P) 陽性病変の発生も比較的早期(観察期間8週間)に認められた。さらに、本モデルに対して緑茶カテキン(epigallocatechin gallate, EGCG)を飲水投与し、その効果を検討した。その結果、0.1% EGCG投与群において、肝線維化およびGST-P陽性病変発生の抑制、血清angiotensin-II (AT-II)、肝におけるangiotensin-converting enzyme (ACE)、angiotensin-II type 1 receptor (AT-1R) のmRNA発現の低下が確認された。すなわち、EGCGによるRASの制御が、NASHに関連する肝発癌の抑制に繋がったことが示唆された。緑茶カテキンEGCG等の植物由来化学物質が、高血圧を含めたメタボリック症候群の病態を改善する可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル動物の作製とその解析については順調に推移している。さらに治療的効果が期待できる薬剤、植物由来化学物質の作用についても順次検討やその準備がすすめられている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、SHRSP-ZFラットに高脂肪食および四塩化炭素を投与するモデルにおける緑茶カテキンEGCGの効果について、さらに解析をすすめる。NASHおよびNASH肝発癌において、酸化ストレスの関与が報告されており、血中・尿中の8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-OHdG)、組織における4-hydroxy-2’-nonenal (4-HNE) を評価するほか、肝臓における抗酸化酵素の発現も比較検討する。また、同動物モデルを用いて、RAS阻害剤の発癌抑制機序に関して検討するとともに、糖尿病治療薬、脂質異常症治療薬等、種々の生活習慣病治療薬の有効性を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は準備段階であり、平成29年度は更なる詳細な実験を計画しており、平成28年度以上に費用が必要となると考えられ、次年度への繰り越しが生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
支出用途としては実験器具、試薬の購入費用、また中間結果発表のための学会参加費、旅費などを検討している。
|