研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD)の病態を解明するために、レチノイド受容体(RARおよびRXR)シグナルに着目した。RARおよびRXRをdominant negativeに阻害する蛋白を発現するトランスジェニックマウス(dnRARおよびdnRXRマウス)を作製し、レチノイドシグナルが阻害されたそれらマウスの表現型を解析した。dnRXRマウスの表現型解析では、対照群との比較において、体重変化や飲水・摂食量には有意な差を認めなかった。また、通常食給餌では、当初予想されていた肥満傾向や糖代謝異常、脂肪肝形成がみられなかった。そのため、高脂肪食およびグルタミン酸Na(MSG)を投与するモデルを作製し、比較検討した。高脂肪食給餌モデルにおいて、グルコース負荷試験で有意な耐糖能異常が確認されたほか、非常に興味深いことに、対照群と比較して著明な体重減少がみられたため「lipoatrophic diabetes」の病態が想定された。また、酸化ストレスのマーカーである血清d-ROMが有意に高値であった。MSG投与モデルにおいては、インスリン負荷試験で有意な差は認めなかったが、グルコース負荷試験の結果からdnRXR群において耐糖能が低下している傾向がみられた。いずれのモデルにおいても、対照群と比較して血清トランスアミナーゼが有意に高値であり、肝脂肪化も顕著であったため、脂肪肝炎は増悪していると考えられた。dnRARマウスについては、対照群に比し、早期からの体重増加が確認され、病理組織にて比較的早期からの脂肪肝形成も認めた。しかし糖代謝については、グルコースおよびインスリン負荷試験ではいずれも対照群と有意な差はみられなかった。上記結果より、肝脂肪化においてはRXRおよびRARシグナルが、糖代謝においてはRXRシグナルが重要な役割を担っていることが示唆された。
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