研究課題/領域番号 |
16K19337
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
岩下 拓司 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (60467206)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵管内乳頭状粘液腫 / IPMN / 悪性化 / microRNA / EUS-FNA / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
粘液を産生する乳頭状上皮の膵管内増殖により膵管が嚢胞状の形態を呈する膵管内乳頭上粘液腫(IPMN)は、膵癌の前癌病変と考えられており、IPMNを正しく診断し、慎重に経過観察することが早期膵癌発見のためには重要である。しかしながら、CT、MRI、EUSなど、現在一般的に使用されている画像診断方法を用いても、膵嚢胞の検出感度には優れているが、IPMNとその他の嚢胞を正しく鑑別し、その悪性化を診断することは容易ではない。嚢胞内容液の分析においても、CEA値が有用であるとの報告を認めるが、その正診率も高いものではなく、悪性化診断における有用性については不明である。
機能性RNAの一種であるマイクロRNA(microRNA: miRNA)は、細胞が分泌するendosome由来の小胞顆粒であるexosome中に存在しており、細胞間の情報伝達物質として機能していると考えられている。miRNAはメッセンジャーRNAの非翻訳領域に配列相補的に結合し、遺伝子機能を調節することにより発生、発癌、老化、ウイルス感染などに関与することが示唆されている。これまでの研究により、様々な臓器の悪性腫瘍において発現が亢進あるいは低下するmiRNAが数多く報告されている。また、癌患者と健常者とでは血液中のmiRNAプロファイリングに違いがみられることが明らかにされ、miRNAが癌の存在診断や、悪性度、予後に関連する重要なバイオマーカーとなることが期待されている。しかしながら、嚢胞内容液中miRNAのIPMNの鑑別診断、悪性化診断における有用性は明らかでない。
本研究の目的は、嚢胞液内のmiRNAのIPMNの悪性化診断における有用性について検討を行うことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵嚢胞液中miRNA解析を行うための、岐阜大学医学研究等倫理審査委員会の承認後、嚢胞内容液の収集を開始した。(承認番号27-378)膵嚢胞を有する症例において、ERCP施行時の経乳頭的膵液細胞診、超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA)、もしくは外科的切除を行った際に膵嚢胞内容液を採取した。多房性で主膵管と交通があり嚢胞内容液が粘液性であるものをIPMNと診断し、手術が施行された場合は、手術標本よる病理診断を最終診断とした。採取した嚢胞液中のmiRNAについて高感度DNAチップを用いて網羅的に解析し、IPMN悪性化に関連するバイオマーカーについて検討を行った。
2016年1月から2016年11月までの間に、IPMN9例(年齢中央値73歳、女性4例)より嚢胞内容液を採取した。嚢胞の部位は頭部2例、体部6例、尾部1例、嚢胞径中央値は36 mmであった。嚢胞液の採取方法は、経乳頭3例、EUS-FNA2例、手術4例であり、最終診断はIPM adenoma(IPMA)6例、IPM carcinoma(IPMC)3例であった。IPMA群とIPMC群の間でmiRNA発現を比較すると、IPMC群で3種のmiRNAが有意に高く、1種のmiRNAは有意に低値であった。
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今後の研究の推進方策 |
おおよそ30例での解析を目標としており、今回の予備的実験結果を参考にすると、約2割はRNA量が不十分であり解析ができないことが予想され、36例程度の症例集積を目指している。症例集積を行っていく。11カ月間の間に9症例よりIPMNの嚢胞液採取を行っており、今後も継続して嚢胞液採取を行っていき、随時miRNA解析も行っていく予定である。
また、有意なmiRNAが発見できれば、次の段階としてEUS-FNAやERCPなどの内視鏡検査を使用して嚢胞液を採取。miRNAの発現を解析し悪性化の判断指標となるかを実際に検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の準備段階であり、平成29年度には今年度以上に膵嚢胞液中miRNA解析が必要となると考えられ、次年度への繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
支出用途としては膵嚢胞液中miRNA解析、成果発表のための学会参加費、旅費などを検討している。
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