研究課題/領域番号 |
16K19339
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩川 雅広 京都大学, 医学研究科, 医員 (50737880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗原 / 自己免疫性膵炎 / IgG4 |
研究実績の概要 |
①患者IgGのマウスへの皮下注射による病原性の評価 本実験系は尋常性天疱瘡の病態解明において確立されたマウスモデルを応用した。AIP(IgG4-RD)患者10例、および年齢・性別をマッチさせたコントロール10例(健常人5例、膵癌患者3例、原発性硬化性胆管炎患者2例)の血清よりIgGを抽出した。マウスに投与する患者IgGとコントロールIgGは同量とした。この結果、患者IgGのマウスへの投与により同患者の罹患臓器と同一のマウス組織に病変ができることを見出し、本研究ではサンプル数を増やし、用量依存性、時間依存性も認めた。 ②患者IgGの各サブクラスにおける病原性の評価 AIP(IgG4-RD)患者IgGをIgG1、IgG2、IgG3、および IgG4 のサブクラスに分画した。各分画の病原性について、①において確立したマウス実験系を用いて評価し、IgG1とIgG4に病原性があることを確認した。 ③ 自己抗原の同定 免疫沈降法を使用した同定 患者あるいはコントロールIgGをカラムに結合させ、免疫沈降法によりマウス膵組織からIgGに反応する蛋白を抽出する。これを電気泳動することにより患者IgGに特異的なバンドを切り出したうえで質量分析を行い①と同様に抗原の候補を同定した。 ④ 自己抗原のvalidation ③で同定した候補抗原から、細胞外ドメインを持ち、患者IgGの結合部位に合致する発現を示すマウス蛋白質を選択した。このマウスrecombinant proteinをサンプルとし、患者およびコントロールIgGを一次抗体として用いたELISA法を行った。患者IgGを用いた場合のみに反応する、タンパクを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の理由から、①~④までの解析がほぼ予定通り終了した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト自己抗原に対する定量法の開発と臨床応用 同定した候補マウスタンパク質をヒト蛋白に変更し、IgG4-RD(n=10)で自己抗体陽性で、ステロイド治療後に反応が減弱し、コントロールでは(n=10)反応しない蛋白を同定する。 同定できたIgG4-RDのみに反応するヒト蛋白について、診断や治療反応性、再発などとの関連について更に症例数を増やし、かつ詳しく検討し、臨床応用の可能性を探ることを目的に下記を行う。申請者らは、難治性疾患克服研究事業(厚生労働科学研究費補助金)「IgG4関連疾患に関する調査研究」班 (研究代表者:京都大学 千葉 勉)においてIgG4-RDのGenome Wide Association Study (GWAS)を行っており、約900人分のリンパ球DNA、血清と臨床データを保持している。また、当院外来フォロー中のAIP40例の経時的な血清を保存しており、診断時、寛解期、再燃時の上記の自己抗体の解析も可能である。さらに、コントロールには当院外来フォロー中の他の自己免疫疾患の患者血清を多数保存しており、かつ京都大学医学部附属病院でバイオバンクに登録された膵癌、胆道癌を含めた癌患者の血清も保持している。どちらも倫理委員会において、本研究に使用する承認をうけている。これらの血清を用いて、IgG4-RD診断能、病勢の把握における、ELISA法による自己抗原定量法と血清IgG4値との比較を行い診断や病勢の把握における有用性について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度だけでは、すべての実験が終わらなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒト自己抗原に対する定量法の開発と臨床応用 昨年度同定した候補マウスタンパク質をヒト蛋白に変更し、IgG4-RD(n=10)で自己抗体陽性で、ステロイド治療後に反応が減弱し、コントロールでは(n=10)反応しない蛋白を同定する。同定できたIgG4-RDのみに反応するヒト蛋白について、診断や治療反応性、再発などとの関連について更に症例数を増やし、かつ詳しく検討し、臨床応用の可能性を探ることを目的に下記を行う。診断時、寛解期、再燃時の上記の自己抗体の解析、さらに、IgG4-RD診断能、病勢の把握における、ELISA法による自己抗原定量法と血清IgG4値との比較を行い診断や病勢の把握における有用性について解析する。
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