B型肝炎に対するペグインターフェロンα2a投与症例61例において、著効(治療終了24週後のHBV DNA<3.3logIU/mL、HBe抗原陰性、ALT正常化)を達成したのは、HBe抗原陽性例では8%(3/39)、HBe抗原陰性例では36.4%(8/22)、HBe抗原セロコンバージョンを達成したのは22.2%(8/36)であった。IL28B遺伝子多型は、major alleleが11例、minor alleleが1例であり、IL28B遺伝子多型と治療効果に関連を認めなかった。治療終了24週後に著効を達成しなかった症例においても、投与中のHBs抗原量は低下傾向を認め、また、投与終了後の新規発癌症例は認めなかった。一方、核酸アナログ治療(ラミブジン、エンテカビル、テノホビル)によりHBV DNA増殖が長期間抑制されている512例について長期予後の解析を行うと、治療開始後5年以内と5年以降の初発肝癌を比較すると、それぞれ年率2.32%、年率1.78%と、5年以降の発癌率は低下していなかった(p=0.383)。続いてエンテカビル症例において、HBs抗原量と肝発癌の関連についての検討では、55歳以上の症例において、5年時点のHBs抗原量1000IU/mL未満の症例では1000IU/mL以上の症例に比して有意に発癌が低率であった(p=0.025)。また、HBコア関連抗原については、5年時点で3.0logIU/mLの症例からは5年以降の新規発癌を認めなかった。核酸アナログ治療により長期間HBV DNA増殖抑制効果が得られている症例においても、HBs抗原低下が重要である可能性が示唆された。しかし、その作用機序からは核酸アナログによるHBs抗原低下効果は乏しいため、今後、予後改善を目指した治療戦略として、HBs抗原低下効果を期待できるペグインターフェロン併用治療の可能性が考えられた。
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