研究課題
【背景及び目的】申請者は、これまでアダプター蛋白質Grb2associated binder-1(Gab1)がマウス急性肝不全モデルにおいてミトコンドリア障害を介した肝細胞死に対する保護的作用や肝細胞増殖作用を有していることを明らかにしてきた(Furuta K, Yoshida Y,Takehara T, et al. . Gab1 adaptor protein acts as a gatekeeper to balance hepatocyte death and proliferation during acetaminophen-induced liver injury in mice. Hepatology. 2016 Apr;63(4):1340-55.)。一方、NAFLDにおいて、ミトコンドリア障害を介した肝細胞死ならびに肝再生不全を来すことが知られている。そこで、今回、申請者は、Gab1に着目してNAFLDにおける肝再生不全の分子機構を解析することを目的とした。【方法】肝細胞特異的 Gab1欠損(KO)マウス(N=7)及び対照(WT)マウス(N=8)に対して、高脂肪食(HFHC)を8週負荷し、肝細胞死や肝糖脂質代謝に与える影響について検討した。【結果】HFHC8週負荷にて、KOマウスでは、WTマウスと比較して、体重が有意に増加し、肝コレステロール含量が有意に増加し、ApoA1の肝内遺伝子発現が有意に低下した。なお、ALTに関しては両群間に有意差を認めなかった。【考案及び結語】肝細胞Gab1欠損は、高脂肪食負荷後の肝内コレステロール含量を増加させたが、肝障害を増悪させなかった。また、KOマウスはWTに比し高脂肪食負荷後の体重が有意に増加しており、Gab1が肝代謝異常に起因する肥満などのメタボリックシンドロームに関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今回、肝細胞特異的Gab1欠損マウスを用いた検討から、肝細胞Gab1は高脂肪食負荷による肝障害に対しては影響を及ぼさない可能性が示唆された。ただし、肝細胞Gab1が肝脂質代謝や肥満に関与する可能性を示唆する予想外の実験結果も得ており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
今後は、今回の実験結果の再現性を確認し、他の脂肪肝モデルでの検討ならびに脂肪肝モデルに対して再生刺激(70%部分肝切除術など)を加えるなどの検討も行っていく予定である。
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Hepatol Res.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/hepr.12854.
Hepatology.
巻: 63 ページ: 1340, 1355
10.1002/hep.28410.