研究課題
平成29年度は、計画II「膵液メタボロミクスによる膵疾患悪性度評価法の検討」と計画III「バイオマーカー候補代謝物のもつ生物学的意義の解明」を当初の目標としていたが、前年度の計画Iにて血液メタボロミクスの膵がん診断における有用性が強く支持されたため、血液分析に注力し継続することとした。膵がんにおいてはリスク疾患の拾い上げが早期発見に有効とされいることから、リスク疾患におけるバイオマーカー候補成分の評価を行った。膵がんステージIおよびIIの55検体、膵肝内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の27検体、慢性膵炎の4検体、健常者の64検体を用いて検討した。その結果、これまでに見出したバイオマーカー候補成分のうちいくつかの血中濃度は、健常者、IPMN、膵がんの順に統計学的有意差をもって高くなっていくことが明らかとなり、膵組織の悪性度との相関関係が示唆された。次に、膵がん早期発見における有用性を背景に偏りのない検体で検討するために、前向きコホート研究検体を用いた検討を行った。血液収集後に長期間追跡し(追跡期間中央値16年)、その間に膵がんを発症した例と発症しなかった例の検体を比較解析した。検討には膵がん発症170例と未発症の340例を用いた。その結果、膵がん発症例では1,5-AGの濃度が有意に低いことが判明し、特に血液採取から膵がん診断までが6年未満の症例においては、既知のリスク要因でオッズ比調整してもなお、1,5-AGの低下が膵がん発症と有意に相関するという結果であり、これまでの結果を支持する結果であった。膵液については、数例のIPMN患者から採取した膵液中の代謝物濃度を半網羅的に測定し、そのうちアミノ酸については定量的に問題がないことを確認した。今後、悪性度別のIPMN膵液比較検討とバイオマーカー候補成分に関する細胞系を用いた基礎的検討実験を計画している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Cancer Sci.
巻: 25 ページ: -
10.1111/cas.13573.