研究課題
本研究の目的は、鳥取大学独自で交配を続ける非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルであるFLSおよびFLS-obobマウスを用いて、正常肝から単純性脂肪肝、NASHへ進展する過程における小胞体(ER)ストレスを同定し、ERストレスのNASHバイオマーカーを明らかにすることである。本年度は、単純性脂肪肝モデルであるFLS 24、36、49週齢およびNASHモデルであるFLS-obob 24、36、48週齢を作成し、と殺した。血清ALTや肝脂質量を測定し、マトリックス代謝酵素や各種サイトカイン、ERストレスマーカーをqRT-PCR法にて測定した。FLSマウスでは、血清ALTは経時的に上昇したが、肝中性脂肪および肝コレステロール量は経時的に減少した。シリウスレッド染色による肝線維化は24週にF1、36週にF1、48週でF1-2相当であった。ERストレスマーカーであるATF3、NUPR1遺伝子発現は、0.77:1.72:1.60、0.96:1.65:2.04とそれぞれ経時的に増加した。次にFLS-ob/obマウスでは、体重は経時的に増加したが、肝中性脂肪量は経時的に減少した。肝線維化は、24週F2、36週F3、48週F4相当であった。JUN、ATF3遺伝子発現は、0.83:1.38:1.56、1.27:1.62:2.48であり経時的に増加した。血清NASHに関するERストレスの影響は、未だ解明されていない点が多く、本モデルでは重度の脂肪肝であることが確認されており、ヒトNASHモデルとして肝線維化や炎症、アポトーシス、そしてERストレスに関わる様々な因子の変化が推測されており、今後も研究を継続していく意義が十分にあると考えられる。特定のERストレスが同定できれば、NASH診断バイオマーカーとしての有用性を明らかにし、NASH改善の治療薬の開発も期待される。
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Yonago Acta Medica
巻: 62 ページ: 36-46
巻: 62 ページ: 30-35