研究実績の概要 |
胆嚢癌は早期の状態では症状が出現しにくく、また解剖学的観点から腫瘍組織を得難いことから、診断が遅くなり結果として予後が悪い。これらの問題点を克服するために、我々は非侵襲的診断法として胆汁circulating tumor DNA(ctDNA)に着目したliquid biopsyという新たな手法を開発した。 胆嚢癌23症例のうち、16症例の胆嚢癌組織DNAと18症例の胆汁ctDNAを解析した。解析には次世代シークエンサー(Illumina, San Diego, CA, USA)とCancer panel(Haloplex, Agilent Technology)を用いた。コントロールとして20症例の胆嚢非癌組織と18症例の健常者(非癌)の胆汁を使用した。 年齢中央値は77歳(44-90)、男女比は7/16、ステージⅠ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳは4/3/5/11症例であった。胆嚢癌組織DNAにおいて、16症例中8症例(50%)で変異陽性であった。TP53、MET、SMAD4、CTNNB1、ARがそれぞれ4症例(25%)、1症例(6.3%)、1症例(6.3%)、1症例(6.3%)、1症例(6.3%)であった。今回の研究では胆嚢癌23症例のうち、胆嚢癌組織と胆汁ともにそろっている症例は11症例(47.8%)であった。この11症例のうち6症例(54.5%)が胆嚢癌組織DNA変異陽性であった。これら6症例に関しては4症例(66.7%)で胆汁ctDNAで同様の変異(TP53が3症例(50%)、ERBB2/3が1症例(16.7%))が確認された。一方で、残りの胆嚢癌組織DNA変異陰性5症例の胆汁ctDNAはすべて変異陰性であった。また、胆汁のみに着目した場合、18症例のうち9症例(50%)で胆汁ctDNA変異陽性であった。TP53、ERBB2/3、KRASが7症例(38.8%)、1症例(5.6%)、1症例(5.6%)であった。胆汁ctDNA変異の解析は感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率それぞれ50%、100%、100%、67%であった。
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