研究課題
本研究では10mm以下の直腸NET-G1の脈管侵襲陽性と陰性のカルチノイド組織を用いてmicroRNAアレイ解析を行い、その転移、浸潤に関わるmiRNAを網羅的に解析する。次いでTargetScanやIPA解析により、標的遺伝子を同定し、転移、浸潤の分子学的機序を検討した。miRNAアレイ解析にて、脈管侵襲陽性群で有意に高発現する5つのmiRNA (miR-144-3p、miR-451a、miR- 551b-3p、miR- 486-5p、miR- 10b-5p)を同定した。さらに、RT-qPCRにて、miR-144- 3pとmiR-451aのみが、脈管侵襲陽性群において有意に高発現していることを確認した。次いで、TargetScan、IPA解析にてmiR-144-3pはPTENを、miR-451aはp19を標的遺伝子としていることを見出した。脈管侵襲陽性群の腫瘍組織を用いた免疫染色では、PTEN/p19の発現が有意に低下していた。H727細胞にmiR-144- 3p/miR-451aを疑似的過剰発現させたところ、それぞれPTEN/p19の有意な発現低下と遊走能、浸潤能の上昇を認めた。逆に、H727細胞におけるPTEN/ p19発現をsiRNAによりノックダウンしたところ、遊走能、浸潤能が有意に上昇した。直腸カルチノイドの脈管侵襲に関わるmiRNAとして、miR-144- 3p、miR-451aを同定した。miR-144-3pはPTENを、miR-451aはCDKN2Dをtargetとし、標的遺伝子の発現を抑制することで、遊走能、浸潤能を上昇させることが示唆された。miR-144- 3p/451aが直腸NET転移予測の新規バイオマーカーとして同定された。ハイリスク症例の拾い上げや逆にOver surgeryを減らすことが可能で、治療方針決定の有用な指標となり得ると考えられる。
すべて 2018
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)