研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症病態における小胞体(ER)ストレスにPNPLA3遺伝子が重要な役割を果たすことを報告されているが、NASHにおけるERストレスと脂質代謝、NASH発症病態におけるPNPLA3遺伝子や遺伝子多型との関わりについては明らかではない。そこで、NASH発症に関与するERストレスに注目し、作成したPNPLA3欠損マウス(KO mice)に対しツニカマイシン(TM)投与によるERストレスを負荷し肝臓の組織学的変化とERストレス応答についてC57BL/6マウス(WT mice)との相違点について比較検討を行った結果、PNPLA3遺伝子はERストレス応答においてXBP-1遺伝子の制御を介して肝臓の脂肪酸やTG代謝に関与することでNASH発症に重要な役割を果たしている可能性が高いことを報告した(Hepatol Res. 2016 May;46(6):584-92. EASL 2016; ILC2016-RS-2079)。更に、KO miceに対してヒトPNPLA3正常および変異遺伝子(I148M)をアルブミンプロモータにて肝臓特異的に過剰発現させた2種類のPNPLA3遺伝子改変マウスをさらに追加作成した。現在、3種類のPNPLA3遺伝子改変マウス(欠損、ヒト正常遺伝子・変異遺伝子導入)を用いて様々な飼料を用いて飼育をするとともに、様々なタイミングでERストレス負荷を行い解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究から多くの研究データが出ており、実験結果に関する学会と論文発表を予定している。
3種類のPNPLA3遺伝子改変マウスおよびC57BL/6マウス(コントロール(WT))を用いて、肝の脂肪化を始めとしたphonotype発現の違いについて検討を行う予定である。各遺伝子改変マウスを高脂肪食および高スクロース食を用いて飼育し各マウスにおける肝臓phenotypeの違いについて解析を行う。また、肝内の脂肪酸・脂質合成系因子の発現の違いや炎症性マーカー、ERストレス応答、apoptosisの評価、さらには線維化関連マーカーについても解析を行う予定である。各遺伝子改変マウスを経時的に観察することで、肝の脂肪酸・脂質合成系因子や、炎症性マーカーおよびERストレス応答、apoptosisの評価や肝線維化関連マーカーの発現の時期による違いについても解析を行い、PNPLA3遺伝子の変異によるNASH発症における関与と重要性について解析を行う。また解糖系、TCAサイクルにおける因子の変化と、長鎖、中鎖、短鎖脂肪酸の各組成の変化を検討する目的でmetabolome解析を行い、脂肪酸代謝および糖代謝についてのPNPLA3遺伝子の変異により影響を受けている新たな因子の探索を行いたいと考えている。
次年度研究および発表にて活用予定があるため、予定していた海外出張など一部取りやめた。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Hepatology Research
巻: 47 ページ: 983-990
10.1111/hepr.12832
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 10146
10.1038/s41598-017-09256-4