研究実績の概要 |
近年,FISH,定量的PCR法,16S rRNA配列をターゲットにしたプローブやプライマーによって,腸内細菌プロファイルが解明されるようになった.腸内細菌の中でも,臨床の疫学研究からFusobacterium nucleatum(以下Fn)感染による大腸癌との関連性が報告されている.一方,Fnはヒト口腔内の常在菌として最も多く検出される菌の一つである.しかし,口腔内と大腸癌から検出されるFnの相関性や由来についての検討はまだされていない.今回我々は口腔内と大腸癌部の細菌叢の関連,特にFnに注目し,その相同性についても検討した.60例の大腸癌患者の唾液,癌部及び正常粘膜から検体を採取した.次世代シークエンサーを用いて細菌の系統分類別に菌叢の解析を行った.次に,大腸癌と正常粘膜で相対存在率に差のある群を比較した.さらにそれぞれの部位におけるFusobacterium属の存在割合を種レベルで比較した.Fusobacteriumの相対存在率は癌部で8.9%,非癌部で3.3%と,癌部で有意に高かった(p<0.05).検出されたFusobacterium属をさらに種レベルで比較するとFnの検出率は唾液で96%,大腸癌で93%だった. さらに培養用の検体を採取した症例において,唾液からは15例中13例, 大腸癌からは15例中9例でそれぞれFnを検出した,.大腸癌でFnが検出された9例の内,8例は唾液でもFnを検出した.唾液,大腸癌ともにFnを検出した8例の内,6例はAP-PCRで共通のバンドパターンを検出した.唾液,大腸癌ともにFnが検出される症例においては75%の相同性を認める結果が得られた.
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