研究課題/領域番号 |
16K19354
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
内山 詩織 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (10714800)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 腸内細菌 / Fusobacterium |
研究実績の概要 |
大腸癌は近年世界的に増加しており、原因やリスクについての研究が急務である。近年、FISH、定量的PCR法、16S rRNAなどにより腸内細菌プロファイルが解明されるとともに様々な疾患との関連が明らかになり、大腸癌との関連性についても研究が進んできている。臨床の疫学研究からFusobacterium 感染と大腸癌との関連性が報告されているが、大腸癌との因果関係は明らかにされていない。本研究は、大腸発癌への腸内細菌の関与を明らかにすることを目的とした。 まず、大腸癌患者51例から大腸癌検体と正常上皮検体を採取し菌叢解析を行い、正常上皮と大腸癌検体でのFusobacteriumを含む腸内細菌の相対存在率を比較した。既報と同様にヒト大腸癌検体でFusobacterium属が多く存在し、Bacteroides属は少ないことが確認できた。 次に感染経路を明らかにするため、ヒトの口腔内(唾液)と大腸癌検体の細菌を系統分類別に菌叢解析を行い、解析結果(Fusobacteriumの相対存在率、検出率)を比較した。そして大腸癌に存在するFusobacterium が口腔内のFusobacterium と相関するかを検討した。 口腔内と大腸癌検体のFusobacterium属細菌の検出率を検討したところ、Fusobacterium nucleatumは口腔内で96%、大腸癌部で93%検出され、他の種と比較し検出率が高いことが分かった。また、口腔内と大腸癌検体のFusobacterium nucleatumを培養し、AP-PCR法にて相同性を検討したところ、6/15(40%)で相同性を認めた。よって癌部のFusobacterium nucleatumは口腔内に由来する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年の計画では、腸内細菌の代謝産物と大腸癌の関連についての解析を行う予定としていた。しかし、Fusobacteriumの感染経路についての検討を追加したため、代謝産物については着手していない。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ヒト大腸癌検体からFusobacterium nucleatumの分離・培養を開始している。今後はマウスの大腸腫瘍モデルを作成し、分離したFusobacterium nucleatumを経口、経静脈投与しコントロールと比較し腫瘍サイズの変化が認められるかどうかの検討を行う予定としている。 また、ヒト検体において大腸癌検体はBRAF変異、MLHのメチル化、CIMPの高メチル化などの遺伝子変異を認めており、Fusobacteriumを感染させたマウスの腫瘍検体においても同様の遺伝子変異が確認できれば、Fusobacterium感染は大腸発癌の原因であることが証明されると考えられる。 因果関係が解明されることにより、Fusobacterium感染が結果であれば大腸癌の早期発見への足がかりとなり、原因であれば胃癌におけるH.pylori除菌のような予防治療などにつながると考えられ、大腸癌診療への新たな展開をもたらすと期待される。
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