研究課題
本研究は、胃粘膜においてヘリコバクター・ピロリ菌感染により誘導されるIntestine Specific Homeobox (ISX)の腸上皮化生と胃発癌における役割を解明することが目的である。ISXが胃発癌において重要な役割を果たしていることを示すために、MNU(methyl-nitroso-urea)を投与し50週後に胃前庭部での胃腫瘍を起こすモデルをISXノックアウトマウスで行った。その結果コントロール群に比べISXノックアウト群では有意に腫瘍数が減少することが判明した。現在、背景粘膜と腫瘍についてコントロールとノックアウトでの違いをmRNAレベル、免疫組織学的に解析することで、ISXが胃発癌に関与するメカニズムを検証している。また胃の三次元オルガノイド培養を用いた解析を行うことで、胃の幹細胞レベルでの変化を検証していく。ISXが胃の腸上皮化生に重要な役割を果たしていることを示すために、胃癌細胞株にsiRNA投与しISX発現のノックダウンを行い、またshISXベクターを用いたISXノックダウン株の作成を行い解析した。ISXノックダウンの結果、腸上皮化生のキーファクターであるCDX2発現の抑制をmRNA・蛋白レベルで確認した。またISXノックダウン胃癌細胞株はマウス皮下への異種移植モデルにおいて有意に腫瘍増殖の抑制が確認された。臨床検体を用いた胃癌におけるISX発現の検証では42%で癌部に発現し、背景粘膜でのISX発現と強い相関を認めることを確認した。
3: やや遅れている
トランスジェニックマウスの作成は想定以上に時間と費用を要するため、他の解析結果を踏まえて必要性を評価した後に取り掛かることとした。
ヒト胃検体を用いた解析、マウスモデルの解析を継続して進めていく。ノックアウトマウスやヒトの胃の3次元オルガノイド培養を用いた幹細胞レベルでの変化の解析について重点的に行っていく。
研究室内に利用できる材料が多数あり、物品費の支出が抑えられたため。
次年度に予定していた研究材料や学会発表のための旅費等で次年度で使用する計画。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of Gastroenterology
巻: 51(10) ページ: 949-60
10.1007/s00535-016-1176-2