研究課題
本研究は、胃粘膜においてヘリコバクター・ピロリ菌(HP)感染により誘導されるIntestine Specific Homeobox (ISX)の腸上皮化生と胃発癌における役割を解明することが目的である。平成29年度はヒト胃検体を用いた解析、マウスモデルの解析を継続して進めた。まずヒト進行胃癌検体でのmRNA発現を解析した。約55%の症例でISXの強い発現を認め、ISXの高発現群では有意にCyclinD1やCDX2の高発現を認めた。この結果はヒト胃癌細胞株にISXを恒常的に発現によるCyclinD1,CDX2の発現亢進の結果から考えられた胃癌におけてISXの細胞増殖(CyclinD1)と腸上皮化(CDX2)への関与を示唆する。またヒト胃癌と背景粘膜におけるISXの強い相関を踏まえると、HPによる胃でのISX発現はISX高発現胃癌の発生への関与が示唆される。次にヒト胃の三次元オルガノイド培養を行いHP感染粘膜由来と正常胃由来のオルガノイドで比較した。感染胃粘膜由来オルガノイドではISX・CDX2・MUC2は高発現で、MUC5ACは低発現であった。この結果はマウスのヘリコバクター感染モデルの胃由来の三次元オルガノイドにおいてISXの発現亢進していたことと一致する。最後にマウスモデルのMNU胃発癌モデルにおいてISXをノックアウトすると有意な腫瘍数の減少を認めた結果の解析を行った。両群の差をqRT-PCRに伴うmRNA、免疫組織学的に評価した結果、腫瘍形成幹細胞マーカーとして知られるDCLK1の発現はISXノックアウトにより有意に低下していた。ISXの恒常発現株でのCD44の発現増加からは、ISXが幹細胞化の維持に重要であることが示唆されていたが、マウス胃発癌モデルを用いてISX発現は幹細胞化の維持に重要であるという仮説が確認された。
すべて 2017
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BMC Gastroenterol
巻: 17(1) ページ: 145
10.1186/s12876-017-0706-6