研究実績の概要 |
本研究では非アルコール性脂肪肝炎(NASH)病態進展には血中エンドトキシン(ET)の増加が一つの鍵であると考えられ,その機序は腸管内フェカリバクテリウム(FB)低下に伴う腸管透過性亢進が関与することを検証することとした.基礎1)食事負荷NASHモデルマウスの便中細菌叢の評価を行いヒトNASHに類似するか検討する;食事負荷NASHマウスモデルに対して便メタゲノム解析を行い,健常肝マウスモデルと比較することで便中細菌叢の分布の違いを検討したところ、ヒト同様にFBの有意な低下を認めた。基礎2)食事負荷NASHモデルマウスを用いて単離したFB投与することで起きるNASH病態への影響を検討するとともにエンドトキシン濃度を検討する;食事負荷NASHモデルマウスにヒト糞便から単離精製したFBをマウスにを経口投与したところ、有意に血中ET濃度が低下していた。臨床1) ヒトNASH患者における便中代謝産物と便中ムチンの解析;ヒトNASH患者の便検体を用いて,便メタボローム解析を行ったところ、NASH患者では健常者に比較して、ビタミンB6の低下とともにカルボキシメチルリジン、コリン、トリメチルアミン、トリメチルアミンオキサイドの亢進を認めた。また,腸管バリア機能の評価のため便中ムチンを測定し線維化軽度群と線維化高度群に分類したところ便中ムチン濃度は有意な変化を認めなかった。 上記をまとめにより、NASHマウスモデルはヒトNAHS病態と同様にFBの低下を示しており、FBの補充によってETの有意な改善を認めた。また、NASH病態の進展により便中の代謝産物の変化(ビタミンB6の低下とともにカルボキシメチルリジン、コリン、トリメチルアミン、トリメチルアミンオキサイド)を認めた。
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