研究実績の概要 |
光線力学的療法(Photodynamic Therapy, PDT) は、光感受性物質が選択的に集積した腫瘍組織にレーザー光を照射し腫瘍細胞を選択的に破壊する治療法である。我々は、癌細胞が糖を取り込む性質を利用し、単糖であるグルコースやマンノースを光感受性物質であるクロリンに連結することにより、飛躍的な殺細胞効果を確認した。近年、癌間質に存在するマクロファージは腫瘍会合性マクロファージ(tumor-associated macrophage:TAM)と呼ばれており、癌細胞の増殖、浸潤、腫瘍血管新生、転移の促進、腫瘍免疫の抑制、癌幹細胞維持に関与することが報告され、癌治療における重要な標的の1つと認識されている。TAMにはマンノースレセプターが発現していることが知られており、MクロリンPDTは腫瘍間質に存在するTAMにも選択的に有意に殺細胞効果を示した。消化管癌の腹膜播種、癌性腹膜炎は標準的治療法がない難治性の病態である。腹水中細胞の約80%はマクロファージ(TAM)であることが知られている。MクロリンPDTを用いた腹膜播種の新たな治療法を検討し、PDTの抗腫瘍免疫誘導効果を含めたメカニズムを解明した。 ヒト食道癌細胞株、ヒト胃癌細胞株、ヒト大腸癌細胞株HTを96wellプレートに培養し、薬剤を投与する。蛍光プレートリーダー(Spactra Max、Molecular Devices、Tokyo、Japan)を用いて薬剤の取り込みを計測した。 また、薬剤投与後にLED機器(LEDR-660DL、Optocode Corporation:波長660nm 照射エネルギー30.8mW/cm2)の照射をし、数日後にWST8アッセイを用いて殺細胞効果を計測した。 マウスの腹膜播種モデルを作成し、PDTの抗腫瘍効果を検討した。
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