研究課題/領域番号 |
16K19360
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
林 佐奈衣 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (10597587)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / 核酸アナログ / NK細胞 / 肝障害 / 免疫 / 炎症 |
研究実績の概要 |
核酸アナログ (NAs) はHBV-DNA複製を阻害する推奨治療薬だが、NAs投与による肝障害軽減の機序は明らかではない。研究代表者は、1、NK細胞がB型慢性肝炎患者 (CHB) で活性化され、肝障害を惹起するという知見を発展させ、この機構がNAs投与によってNK細胞がもたらす肝細胞傷害に与える影響を解析すること、2、1で得られた情報をもとに宿主因子を活用した新たなHBV治療戦略の情報を得ることを目的として研究を行い、以下の実績を得た。 (1) CHBで高発現するCD56bright+TRAIL+細胞を樹立し、HBVを感染させたHepG2-NTCP細胞へ添加した結果、CD56bright+TRAIL+細胞は量依存的、HBV非特異的に肝障害を誘発した。一方、NAs添加時にも同レベルの肝障害は維持され、NAsによる直接的な抑制能は明らかとはならなかった。 (2) CD56bright+細胞はCHBの肝細胞に集積しALT値と相関するという報告より、CD56bright+TRAIL+細胞の走化能を評価した。 (1) のCD56bright+TRAIL+細胞とHBV感染肝細胞を共培養した培養上清をTrans-wellのlower wellへ、CD56bright+TRAIL+細胞をupper wellへ添加した結果、CD56細胞はHBV単独培養上清と比較してCD56bright+TRAIL+細胞を含む培養上清に対して走化を亢進させたが、NAsの有無による変動は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
B型急性肝炎患者におけるウイルス排除と肝炎惹起は、主に活性CD8T細胞により誘導されるが、B型慢性肝炎患者においては肝障害の本態は明らかではない。 本研究では、慢性肝炎患者においてCD56bright+TRAIL+細胞は肝障害 (ALT値) の程度と相関し、NAs治療後にCD56bright+TRAIL+細胞数が減少するという臨床背景に基づき、CD56bright+TRAIL+細胞に着目してin vitro評価を行った結果、CD56bright+TRAIL+細胞が肝細胞傷害を誘発することが明らかとなった。この結果は、慢性肝炎においてCD56bright+TRAIL+細胞が肝傷害に寄与する可能性を示唆するものであるが、一方で、NAsがCD56bright+TRAIL+細胞による肝傷害を直接的に抑制する可能性を見出すことができなかった。以上、研究計画はおおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、CD56bright+TRAIL+細胞の活性を誘発する宿主因子の同定を目指し、1年目に評価したin vitroの共培養系で追加解析を行う。次年度はNK細胞と宿主因子を共培養し、HBV感染肝細胞に対する肝障害誘導能、CD56bright+TRAIL+細胞の活性レベルおよび走化性を明らかにするとともに、これらの程度がNAs添加により改善されるかを評価する。以上の解析により、期待される因子が同定された場合、その機能の詳細を検討するとともに、HBV genotypeおよびNAs耐性変異株によりCD56bright+TRAIL+細胞が有する肝傷害能に差異が生じるかを比較検討し、同定された宿主因子とHBV因子との相互作用の解析を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は対象とする宿主免疫細胞種を拡大して追加解析を行うため、主に免疫細胞の培養ならびに培養細胞を用いたウイルス感染実験に必要な各種培養関連試薬、プラスチック/ガラス製品、タンパク質実験試薬、RNA関連実験試薬などの購入のため物品費を計上する。
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