研究課題
B型急性肝炎患者におけるウイルス排除と肝炎惹起は主に活性CD8T細胞により誘導されるが、B型慢性肝炎の本態は明らかではない。本研究では、B型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ (NAs) 治療による肝障害改善の機序を明らかにすることを目的とし、下記の評価を行った。1. 慢性肝炎患者においてCD56bright+TRAIL+NK細胞 (以下、NK細胞) は肝障害 (ALT値) の程度と相関し、NAs治療後に肝臓に含まれるNK細胞数が減少する。以上の臨床背景に基づき、NK細胞に着目してin vitro評価を行った結果、NK細胞は量依存的に同細胞の走化を促進し肝細胞傷害を誘発することが明らかとなった。この結果は、慢性肝炎においてNK細胞が肝障害に寄与する可能性を示唆するものであった。2. NAs治療と炎症性サイトカインの関係を明らかにするために、NAs投薬前後のB型慢性肝炎患者に含まれる血清中サイトカインを評価した。ALT量>90 U/L、HBVDNA量>6 log copies/mL、HBe抗原陽性のNAs治療対象患者より、性・年齢をマッチさせたエンテカビル(ETV) 単独治療群 (n=9) もしくはテノホビル (TDF) 単独治療群 (n=5) に対して、NAs投与前、投与12週、48週後の血清サイトカインの変動を検討した。その結果、TDF投薬患者では血清IP10量は投与前と比較して投薬後12、24週で低下したが (p>0.001)、ETV投薬患者では有意な減少を認めなかった 。2014年に認可されたNAs・テノホビル (TDF) は血清HBVDNAを低下させるだけではなく、HBe抗原陽性例に対してはHBs抗原をも消失させることが報告されているが詳細な機序は不明である。今後は症例を増やし、肝障害の改善および治療応答に与える影響を検討する。
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