研究課題/領域番号 |
16K19361
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
三井 烈 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90434092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細動脈 / 平滑筋 / 周皮細胞 / カルシウムイメージング / 自発Ca2+上昇 / Cl-チャネル / Ca2+チャネル / ギャップ結合 |
研究実績の概要 |
本研究では、直腸の細動脈mural cells(血管平滑筋や周皮細胞)で自発Ca2+上昇が生ずることを見出し、その機序を調べた。最終年度には内皮細胞によるその制御についても検討した。 ラット直腸粘膜下層の直径約20マイクロメートルの毛細血管前細動脈(precapillary arteriole)において、mural cellsは丸い細胞体を有し、数本の突起をのばしていた。細動脈mural cellsはギャップ結合によってつながり、細胞間で同期した周期的な自発細胞内Ca2+上昇を示した。小胞体IP3受容体からの自発的Ca2+放出がCa2+活性化Cl-チャネル(CaCCs)を開口させると、脱分極(細胞外へのCl-流出)がおこり、T型およびL型電位依存性Ca2+チャネルを介したCa2+流入により細胞間で同期した自発Ca2+上昇を示すと考えられた。 以前報告した胃腸細静脈の自発Ca2+上昇・自発収縮は、CaCCs開口による脱分極が近隣のmural cellsへ伝わる際にL型Ca2+チャネルが開き、さらなる脱分極を誘発することで同期性が保持された。これに対し、細動脈ではCaCCs開口による脱分極自体が大きく、細胞間の電気的同期を生ずるのに十分と推察された。細動脈mural cellsのT型およびL型Ca2+チャネルの開口は、それぞれ自発Ca2+上昇の頻度と持続時間を増加させた。 一方、内皮細胞から常に放出される一酸化窒素(NO)は、細動脈mural cells内でcGMP産生を促して自発Ca2+上昇頻度を抑制していた。cGMP 分解酵素phosphodiesterase 5はこれに拮抗して働いていた。 直腸壁は、糞塊により伸展されると血液が滞りやすい。細動脈mural cellsの周期的な自発Ca2+上昇は、周期的な細動脈自発収縮をひきおこして虚血を防ぐための機構であると推察された。
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備考 |
2018年日本平滑筋学会第4回白鳥常男賞(受賞論文:Mitsui R, Hashitani H. Properties of synchronous spontaneous Ca2+ transients in the mural cells of rat rectal arterioles. Pflugers Archiv-European Journal of Physiology 2017)
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