研究課題/領域番号 |
16K19362
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
寺西 優雅 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 医員 (70733947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝星細胞 / 胆汁酸 / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
肝星細胞(HSC)の活性化は肝線維化と密接な関係にあり、抗線維化治療の標的として注目されている。胆汁酸は腸肝循環しており恒常性維持に寄与しているが、HSCへの影響に関して未知である。本研究ではHSC活性化に対する胆汁酸の影響をヒト初代培養星細胞(HHSteC)を用いて検討した。 事前研究と異なるロットのHHSteCにコール酸(CA), ケノデオキシコール酸(CDCA), ウルソデオキシコール酸(UDCA), デオキシコール酸(DCA), リトコール酸(LCA)を添加し、48時間培養後の遺伝子発現変化を定量的PCRで解析した。事前研究ではLCAのみに観察された用量依存的Alpha-Smooth muscle actin(aSMA)発現減弱とPeroxisome proliferator-activated receptor g(PPARg)発現増強が、CDCAでも同様の変化を示した。 LCAはビタミンD受容体(VDR)と強い親和性があり活性化することが知られているので、HHSteCに1.25-(OH)2ビタミンD (VitD、100 nM) を添加、48時間培養後の遺伝子発現変化を定量的PCRで解析し、LCAの遺伝子変化と比較した。VitDはHHSteCのaSMA発現減弱させたが、PPARg発現増強させなかった。またVitDはVDRの標的遺伝子CYP24A1発現を増強させたが、LCAはCYP24A1発現を変化させなかった。以上よりLCAの遺伝子発現変動はVDR以外の因子を介して作用していると推定された。 3つの胆汁酸類似化合物およびLCAのタウリン抱合体(TLC)についても同様に観察した。TLCはLCAよりも高濃度でaSMA発現減弱させた。興味深いことに化合物XはLCAよりも低濃度でaSMA発現減弱、PPARg発現増強させLCAよりも効果が強かった。他の化合物は変化させなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LCAとマグネットビーズの結合反応が想定以上に難しく、その最適条件を決定するために時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの実験結果よりLCAのHSC活性化抑制作用がVDRを介しているものではないことが示唆された。現在、LCAが作用する既知の因子(TGR5、PXR、FXR)について検証しており、確証実験を引き続き実施する。 上記に加え、研究連携者が化合物Xに結合するタンパク質を同定に成功している手法、マグネットビーズと結合させたLCAとタンパク質を共沈降させて質量分析にて、LCAと結合するタンパク質を同定する。Western blotting法を用いてタンパク質を確証させる。同定されたタンパク質の活性化(もしくは阻害物質)をHHSteCに添加して、実際にHSC活性化(もしくは活性化抑制)されることを確認する。 また同定されたタンパク質の活性化(もしくは阻害物質)を線維化動物モデルに投与して線維化が増悪(もしくは改善)することを確認する。更に肝硬変患者からHSCをLaser Microdissectionで単離し、同定されたタンパク質の発現を免疫染色もしくはWestern blottingで確認する。また血清ALT、総ビリルビン、血小板、アルブミンや線維化マーカーであるヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、M2BP糖鎖修飾異性体を測定し、肝内の同定された蛋白の発現量との相関関係をみる。
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次年度使用額が生じた理由 |
LCAとマグネットビーズの結合反応が想定以上に難しく、その最適条件を決定するために時間を要したので、質量分析など次の実験に至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
LCAと結合するタンパク質を同定するために質量分析を行う。また、動物モデルを使用するのでマウスの購入、その他免疫染色の抗体や試薬の購入、ヒト検体に関しては血清ALT、総ビリルビン、血小板、アルブミン、ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、M2BP糖鎖修飾異性体を外注測定する。
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