当研究では、核内オーファン受容体であるNr4a3分子に着目しその腸管恒常性制御につき検討した。まずNCBIデータベース上のNr4a3に関連するマイクロアレイデータをメタ解析し、Nr4a3遺伝子の多寡によるDifferentially expressed gene clusterを調べてみたところ、すべてのDatasetに多数の神経系に特異的に発現する遺伝子群の変動が見られた。Dataset間における共通遺伝子群は存在せず、Nr4a3分子はCell-intrinsicな神経系遺伝子発現制御を行っていると考えられたため、次にNr4a3分子の腸管神経叢への関与につき検討することとした。データベース検索からヒトNr4a3分子はHirschsprung病のunidentified disease lociである9q31領域に存在し、興味深いことに同分子欠損マウスを解析するとHirschsprung病類似疾患であるImmature Ganglia様の病態をとり、腸管神経叢が低形成になっていることが判明した。さらに、急性腸炎も一部のセロトニン受容体作動薬によりその差がrescueされ、消化管神経叢と急性腸炎の新たな制御メカニズムを見出すことに成功した。さらにその分子メカニズムを追うため、マクロファージと神経伝 達物質との関連性を検討したところ、CGRP分子が同定でき、炎症制御に寄与していることが明らかとなった。当研究は過去に報告を見 ない消化管神経節形成を介した急性炎症制御メカニズムに迫り、新たな診断ならびに治療応用への突破口になるものと思われる。
|