研究課題/領域番号 |
16K19368
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
安斎 和也 東海大学, 医学部, 助教 (20724941)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胆管前駆細胞 / 胎生期肝前駆細胞 / 分化誘導 |
研究実績の概要 |
我々は胎生13日(E13)肝臓由来の胎生期肝前駆細胞(LPCs)を直接3次元培養しても胆管様構造の形成能を持たない一方で、それらを7日間平面培養した後に3次元培養に供すると高増殖性の胆管様シストが形成されることから、7日間の平面培養の間に胎生期LPCsが胆管前駆細胞への分化誘導されていること考えた。そこで本研究ではこれらのことを踏まえ、胎生期LPCsの胆管前駆細胞への成熟メカニズムの解明を目的とした。 胎生期LPCsを平面培養後に3元培養に供するとALBUMIN陰性CK19陽性の長期継代可能な胆管様シストを形成し、これらの遺伝子発現解析でも肝細胞系遺伝子は抑制される一方、胆管系遺伝子の高発現を認めた。輸送蛋白であるMDR1の特異的基質であるローダミン123を用いてシストの機能評価を行ったところ正常な排泄能を示した。また、平面培養中にHGFやOSMなどの肝臓成熟因子を添加するとシスト形成能が抑制され、フローサイトメトリーでの解析では、平面培養後のCD133+CD326+分画に胆管前駆細胞が濃縮されていることが判明した。またin vivoにて7日間成熟した出生直後(E20に相当)の新生児期LPCsは、前培養なしで3次元ゲル培養にて胆管系シストを形成することを見出した。つまり、in vivoの胎生後期にみられるLPCsの成熟過程は、我々が構築したin vitroでの前培養の実験系で代替が可能であることが示唆された。平面培養前後の網羅的遺伝子変化をマイクロアレイにて解析し、胆管系への分化誘導の鍵となる遺伝子検査を行っているが、現在のところ決定的な結果は得られていない。しかし胆管機能形成に重要といわれるGrhl2をレトロウイルスにて胎生期LPCsに遺伝子導入し3次元培養した結果、効率的なシスト形成と導入前と比してCK19の高発現がみられており、有力な候補の一つと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究で、胎生期LPCsにおいてin vitroにおける7日間の平面培養が、in vivoでの成熟過程を模倣していることを明らかにした。同実験系を用いることで、in vitroにおいて胆管系分化の詳細な分化メカニズムの解明が可能となったことは大きく前進していることである。しかし現在、平面培養前後の遺伝子変化をマイクロアレイにて解析、得られた候補遺伝子の遺伝子導入実験を行っているが、胆管系の分化誘導を有意に促進するキーファクターは同定できていない。しかしGrhl2の遺伝子導入実験ではシストの効率的な形成と胆管系遺伝子の高発現を認めており、さらなる追加検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
胆管系の機能形成遺伝子であるGrhl2の遺伝子導入により胆管系への分化誘導が促進される結果が得られており、Grhlファミリーのシグナル伝達系のシスト形成への影響を解析することで有力なキーファクター同定につなげていく。また、平面培養前後の比較だけでなく、7日間の培養期間中の継時的な遺伝子変化を追いかけていくことで成熟メカニズム解明の一助としていく。 これらの研究結果をもとに、得られた候補遺伝子をiPS細胞由来肝前駆細胞に強制発現等を通じて導入し、ヒトiPS細胞から胆管様のシスト構造を効率的に誘導可能かを検討し、再生医療への応用につなげる足掛かりをつかむ。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたアメリカ肝臓学会への参加・発表を行えなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
備品の充実、実験器具の購入に充て、さらなる研究発表を行い発信していく。
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