研究実績の概要 |
我々は胎生13日(E13)肝臓由来の胎生期肝前駆細胞(LPCs)を直接3次元培養しても胆管様構造の形成能を持たない一方で、それらを7日間平面培養した後に3次元培養に供すると高増殖性の胆管様シストが形成されることから、7日間の平面培養の間に胎生期LPCsが胆管前駆細胞へと分化誘導されていると考えた。そこで本研究ではこれらのことを踏まえ、胎生期LPCsの胆管前駆細胞への成熟メカニズムの解明を目的とした。 前年までの研究成果として、マウス胎生肝臓から前駆細胞を純化培養し、胆管様構造体を誘導する系の構築を進めた。肝前駆細胞マーカーDlk1陽性細胞を分離・平面培養することで、胆管細胞マーカーKeratin19(Krt19)の発現上昇やin vitroの管腔構造形成能を獲得することを明らかにしている(Anzai et al., 2016)。さらに、胆管系の機能を制御する転写因子であるGrhl2の強制発現によって胆管様Cystの形成能が上昇することを見出した。 本年度は、マウス肝前駆細胞の肝細胞および胆管細胞への分化を制御する転写因子の解析を行った。Grhl2が上記のように胆管細胞への分化を誘導するのに対して、今回行ったスクリーニング系では肝細胞系列への誘導能を持つ転写因子群の探索をおこなった。その結果、KLF15の遺伝子導入により肝成熟化が強く誘導されることを明らかにした。
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