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2016 年度 実施状況報告書

門脈血の直接採取による腸内細菌環境と肝疾患の探索

研究課題

研究課題/領域番号 16K19371
研究機関聖マリアンナ医科大学

研究代表者

重福 隆太  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20649272)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード門脈血 / 腸内細菌叢 / LPS / 非アルコール性脂肪性肝炎 / アルコール性肝疾患 / 食道静脈瘤 / 肝血流
研究実績の概要

これまでにヒト門脈血液内の生理活性因子、特にLPS 濃度やTLR-4 リガンド活性、さらに門脈内に侵入する細菌叢のプロファイルについて検討された報告はない。ヒト門脈血を直接使用し分子生物学的解析を行うことで、ヒトの腸内細菌による肝疾患への影響、肝硬変における病態進展メカニズムの解明につながる可能性が予測される。
アルコール性肝硬変症例の静脈瘤治療時に採取した門脈血と、同一時期に採取した糞便を用いて、DNA抽出後に細菌16S rDNA ライブラリーを作成し次世代シークエンス(NGS)解析を行った。結果、門脈血中にはいくつかの細菌が検出された。さらに、同一症例の門脈血と糞便細菌叢を比較すると、検出された細菌門のプロファイルは一致しなかった。すなわち、糞便中に検出された全細菌種が腸粘膜バリアを通過し門脈内に侵入するわけではなく、一部の菌種のみが門脈内に侵入し肝臓に到達する可能性が示唆された。一方、コントロールとした肝膿瘍合併症例の腸内細菌叢と肝膿瘍液をNGS解析すると、臨床的にFusobacterium nucleatumによる肝膿瘍と診断した症例の糞便細菌叢にはFusobacterium nucleatumは検出されず、糞便内の細菌叢と系門脈的に侵入した膿瘍細菌叢が大きく異なることが明らかとなった。このコントロール例の結果も合わせて、肝疾患と腸内細菌叢の関連性を検討するためには、糞便細菌叢の解析のみでは十分ではない可能性が示唆された。門脈支配領域の一つである小腸の細菌叢を考慮する必要もあると考え、門脈血内に存在する細菌叢を同定することの重要が再認識された。
以上の結果から、糞便細菌叢の解析のみでは門脈を介する肝臓の病態形成に関与する腸内細菌叢は同定できず、実際の門脈血を直接的に解析する必要性が明らかとなり、さらなる検討(門脈血と糞便を同時採取した症例は10例)を継続する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

サンプルの採取に関しては、想定した方法で安全に十分量の検体採取が可能であった。さらに門脈血と糞便の細菌叢プロファイルは同一ではなく、当初の予定通り肝疾患の病態進展に影響する細菌種の同定やLPSの関与など、次年度以降の研究の重要性が高まった。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、次年度は門脈血ならびに同時ポイントにおける末梢静脈血を用いて、血中のエンドトキシンや炎症性サイトカインをELISAで測定し病的意義を評価する。また、門脈血清を分離しin vitro で培養細胞に添加し、インターフェロン産生量からTLR 活性能を評価する。合わせて、siRNA を用いたノックダウン実験を行い、門脈血内に存在する最も活性の高いTLR リガンドを同定する。さらに、門脈血に流入する細菌叢プロファイルを次世代シークエンスで評価し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NASH)、アルコール性肝疾患(ASH)を含む種々な肝疾患における病態形成に関与する腸内細菌叢および生理活性因子の解析を進める予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] アルコール性肝硬変における内視鏡的食道静脈瘤硬化療法前後の血行動態の変化-C型肝硬変との比較-2017

    • 著者名/発表者名
      重福隆太、高橋秀明、中野弘康、服部伸洋、池田裕喜、渡邊綱正、松永光太郎、松本伸行、奥瀬千晃、佐瀬茂、伊東文生、鈴木通博
    • 雑誌名

      日本門脈圧亢進症学会雑誌

      巻: 23 ページ: 22-32

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Correlations of Hepatic Hemodynamics, Liver Function, and Fibrosis Markers in Nonalcoholic Fatty Liver Disease: Comparison with Chronic Hepatitis Related to Hepatitis C Virus2016

    • 著者名/発表者名
      Ryuta Shigefuku, Hideaki Takahashi, Hiroyasu Nakano, TsunamasaWatanabe,Kotaro Matsunaga,Nobuyuki Matsumoto,Masaki Kato,Ryo Morita,Yousuke Michikawa,Tomohiro Tamura,Tetsuya Hiraishi,Nobuhiro Hattori,Yohei Noguchi,Kazunari Nakahara,Hiroki Ikeda,Toshiya Ishii,Chiaki Okuse,Shigeru Sase,Fumio Itoh and Michihiro Suzuki
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 17 ページ: E1545

    • DOI

      10.3390/ijms17091545.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 非アルコール性脂肪性肝疾患におけるXenon CTの診断能の検証.2016

    • 著者名/発表者名
      重福隆太、高橋秀明、中野弘康、吉田良仁、末谷敬吾、田村知大、平石哲也、野口陽平、服部伸洋、中原一有、池田裕喜、渡邊綱正、松永光太郎、松本伸行、奥瀬千晃、佐瀬茂、伊東文生、鈴木通博.
    • 雑誌名

      アルコールと医学生物学

      巻: 34 ページ: 58-65

  • [学会発表] アルコール性肝硬変における内視鏡的食道静脈瘤硬化療法前後の血行動態の変化 -C型肝硬変との比較-2017

    • 著者名/発表者名
      重福 隆太、高橋 秀明、中野 弘康、服部 伸洋、池田 裕喜、渡邊 綱正、松永光太郎、松本 伸行、奥瀬 千晃、佐瀬 茂、伊東 文生、鈴木 通博
    • 学会等名
      アルコール医学生物学研究会(JASBRA) 第36回 学術集会
    • 発表場所
      新横浜プリンスホテル(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2017-01-27 – 2017-01-28
  • [学会発表] Xenon CTを用いた内視鏡的静脈瘤硬化療法前後の肝血流量評価2016

    • 著者名/発表者名
      重福隆太、高橋秀明、中野弘康、服部伸洋、池田裕喜、渡邊綱正、松永光太郎、松本伸行、奥瀬千晃 、佐瀬茂、伊東文生、鈴木通博
    • 学会等名
      日本門脈圧亢進症学会 第23回 総会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2016-09-09 – 2016-09-10
  • [学会発表] S状結腸癌が細菌の侵入経路と考えられたFusobacterium nucleatumによる化膿性肝膿瘍の1例2016

    • 著者名/発表者名
      菅野優樹、重福隆太、渡邊綱正、中野弘康、池田裕喜、白勢大門、服部伸洋、松永光太郎、松本伸行、奥瀬千晃、鈴木通博、伊東文生
    • 学会等名
      日本消化器病学会 第339回 関東支部例会
    • 発表場所
      海運クラブ(東京都・千代田区)
    • 年月日
      2016-05-21
  • [学会発表] Fusobacteriumによる化膿性肝膿瘍の5症例の臨床的特徴2016

    • 著者名/発表者名
      重福隆太、中野弘康、路川陽介、服部伸洋、池田裕喜、高橋秀明、渡邊綱正、松永光太郎、松本伸行、奥瀬千晃、鈴木通博、伊東文生
    • 学会等名
      日本消化器病学会 第102回 総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京都・新宿区)
    • 年月日
      2016-04-21 – 2016-04-23

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公開日: 2018-01-16  

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