研究課題
食道静脈瘤治療時に独自の方法でヒト門脈血を直接採取し分子生物学的解析を行うことで、門脈血液内に細菌が迷入する可能性を見出し、さらに腸内細菌種と肝疾患形成の関連性を検討している。本年度までに、門脈血を採取した食道胃静脈瘤合併肝硬変は22例に達し、その要因内訳は、アルコール (9例)、NASH (3例)、肝炎ウイルス (4例)、PBC (3例)、非肝硬変例 (3例)である。さらに、門脈血と同一時期に採取した糞便を用いて、細菌16S rDNA ライブラリーを作成し次世代シークエンス(NGS)解析を行った。コントロールとしては、20歳代健常人の糞便NGS結果を使用した。まず初めに糞便細菌叢のNGS結果では、アルコールないしNASHではBacteroides門の割合が減少し、Firmicutes門の割合が増加しており、さらにProteobacteria門も増加していることが分かった。次に、同一症例の門脈血を用いたNGS解析結果では、3万リードを取得するIllumina MiSeqのデータでは一部の症例で得られた結果が細菌16S rDNAに一致せず非特異的PCR増幅物と考えられ、さらに食道静脈瘤穿刺時の口腔・食道内常在菌であるProteobacteria門が検出された。したがって、採取したサンプル内への食道粘膜上細菌の混入を否定するために、無菌的カテーテル操作によるバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO) 施行時に門脈血液を採取し同様の検討を行った結果、やはり門脈血液中に細菌DNAが検出されることを確認した。現在までに、アルコールによる肝硬変が6例、NASHによる肝硬変3例のNGS解析が終了し、同一症例の糞便NGS結果と比較検討を行っている。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Clin J Gastroenterol.
巻: 6 ページ: 487-492
10.1007/s12328-018-0873-1