研究課題/領域番号 |
16K19375
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
岡田 季之 久留米大学, 医学部, 助教 (10607328)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胆汁酸 / AICDA / DNAメチル化 / クローン病 |
研究実績の概要 |
クローン病の病態の特徴の一つに、腸肝循環不全により回盲部および結腸への過剰な胆汁酸の流出が知られているが、その胆汁酸が大腸上皮細胞にどのような影響を及ぼしているかよくわかっていない。これまで、①食事由来の脂肪によって誘導されるタウロコール酸が、腸内細菌叢を変化させ大腸炎を悪化させること、②扁平上皮がん細胞株へ胆汁酸処理すると、異所性にAICDAの発現が誘導されること、③AICDAがDNAの脱メチル化に重要な分子であることが報告されている。 本研究は、胆汁酸が大腸上皮細胞に作用することでAICDAの発現が異所性に誘導されるのか。そして誘導されるAICDAは、大腸上皮細胞のエピゲノムにどのような影響を与えるのか明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために平成28年度は、胆汁酸処理によってAICDAの発現が異所性に誘導されるについて中心に検討を行った。 1)外科手術により摘出された大腸組織より大腸上皮クリプトの精製を行い胆汁酸処理を試みたが、刺激なしでは大腸上皮クリプトがすぐにアポトーシスを起こすため、評価を行うのに難航している。 2)ヒト臨床サンプルを用いた実験系の確立が困難であったため、大腸がん細胞株を用いて胆汁酸 (デオキシコール酸(DCA)など)処理を24時間行い、AICDAの発現誘導が認められるか、real-time PCRを用いてAICDAのmRNAの発現量を評価した。その結果、大腸がん細胞株へDCA処理を行うことで、AICDAの発現が誘導されることを明らかにした。 現在、胆汁酸によって誘導されるAICDAが、大腸上皮細胞においてどのような標的遺伝子に結合し、遺伝子の発現変化をもたらしているのか評価するため、準備を行っている。実験材料や条件が整い次第、検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床サンプルへ胆汁酸刺激を行いAICDAの異所性発現誘導が認められるか検討を行っていたが、実験系の樹立が困難であったため、当初の計画よりやや遅れているが、in vitroでの実験系での体制は整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、胆汁酸処理を大腸癌細胞株に行うことで、AICDAの異所性発現の誘導が認められることを見出した。 平成29年度以降は、以下の項目について検討を行っていく。 1) 大腸上皮細胞でAICDAの異所性発現により影響を受ける遺伝子の同定を試みる。 2)大腸上皮細胞においてAICDAが結合する標的遺伝子の同定を試みる。 3) 大腸上皮細胞でAICDAが結合する標的遺伝子のメチル化プロファイルを検討する。 4) 1)-3)の解析で同定したAICDAの異所性発現により特異的に変化する遺伝子が、クローン病患者で実際に変化している遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の予定していた研究計画に遅れが生じてしまったため、当初予定していたマイクロアレイの受託解析まで実施することができなかった。そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
持ち越した研究費を使用して、前年度に予定をしていたマイクロアレイ受託解析を行い使用する予定である。
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