研究実績の概要 |
肝細胞において酸化ストレスや小胞体ストレスと、細胞内の蛋白分解機構であるオートファジーに着目し研究を行っている。培養肝癌細胞において、肝細胞癌に対する一次治療薬で、multikinase活性阻害作用をもつソラフェニブが、小胞体ストレスに対する防御機構であるunfolded protein response(UPR)や、肝細胞の中間径線維の構成成分のひとつであるケラチンのリン酸化を阻害し、さらに細胞内の異常蛋白の分解に重要な異常蛋白のユビキチン化や、細胞保護的に作用すると考えられているMallory-Denk body様の肝細胞内封入体の形成を阻害し、プロテアソーム阻害薬との併用で相乗的に細胞死を誘導することを報告した(Honma Y, Harada M, et al.Exp Cell Res 2013.)。他にもソラフェニブはAktの活性化を阻害し、下流のmTOR活性を阻害すること、さらに癌細胞の浸潤、転移に関わる JNK、p38といったstress-activated protein kinaseの活性を阻害し、抗腫瘍作用を発揮留守ことを報告した(Honma Y, Harada M, et al. J Gastroenterol 2014.)。これらの機序として、ソラフェニブが異常蛋白のユビキチン化に関与するkinaseや、UPRの誘導に働く小胞体膜上のストレスセンサーであるIRE1αやPERKのリン酸化、PERK下流のeIF2αのリン酸化に作用し、小胞体ストレスに対する癌細胞の脆弱性を誘導すると考えられた。これらの結果から、ソラフェニブはmultikinase阻害薬として、従来報告されているRafや受容体型tyrosine kinaseの阻害とは異なる、様々なkinase活性を阻害し、抗腫瘍作用を発揮する可能性があり、抗腫瘍作用や副作用へ関与すると考え検討を継続中である。
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