研究実績の概要 |
日本における胃癌は、発症の主要因であるヘリコバクター・ピロリ菌(HP)は除菌治療が適応となっており罹患数・患者数ともに減少傾向である。しかし、近年HPの除菌後に発見される胃癌が問題となっている。このためヘリコバクター・ピロリ菌除菌後に発症する胃癌について特徴的なゲノム変異について解析をおこなった。とくに除菌後胃癌では癌の上皮に低異型上皮(ELA)といわれているが、癌由来なのか正常部由来なのかはっきりしていない。今年度の研究は、ELAを伴った除菌後胃癌10症例からELAと癌部、正常部、血液からgDNAを抽出し、癌パネルを用いたdeep シークエンスを行う事によってゲノム変異の比較検討をおこなうこととした。また未除菌胃癌、30例の解析をおこない同様にシークエンスをおこなった。未除菌胃癌ではAPC, ERBB2, TP53に変異が多くみとめられ、遺伝子長を考慮したmutation rateの解析においてTP53は胃癌の発症に有意な関連があることがわかった。また除菌後胃癌はAPC,ERBB2, NOTCH1, TP53に変異をみとめた。変異の割合は除菌後胃癌と未除菌胃癌では変異の割合に有意な差をみとめなかった。正常部において癌関連遺伝子に変異をみとめているかの解析をおこなったところ、正常部には変異はみとめられず、食道癌などとくらべて前癌状態から変異を認める訳ではないことがしめされた。さらにELAの部分の変異は癌、正常部を比較して興味深い結果をみとめており、現在論文にまとめている段階である。
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