研究課題
近年の化学療法の進歩により消化管がん患者の生存期間は延長してきたが、決して満足できるものではない。がん細胞は治療の介入によりさらに遺伝子異常の蓄積をきたし、様々な特性を獲得する。そのため、今後のさらなる生存期間延長のためには、がんの個性に基づいた治療法の選択、すなわち個別化医療が必須である。個別化医療の遂行のためには、がんの個性を的確に捉え、最適な治療を予測するコンパニオン診断法が必要になる。そのため、継時的・空間的に変化するがん細胞の個性を正確かつ非侵襲的にとらえる技術の創出が求められる。末梢循環腫瘍細胞(CTCs)は幹細胞性, 上皮間葉転換、生存促進性、休眠状態に関連した遺伝子の発現増加の可能性があり、化学療法の抵抗性や遠隔転移との関連が示唆される。従って、CTCs の生物学的な特性を理解することにより化学療法の抵抗性の原因等が明らかになる可能性があり、このことは将来の創薬へとつながる可能性がある。私たちはCTCsから遺伝子変異を確認する効率の良い解析方法の確立に挑戦した。上皮表面マーカーを利用せず、細胞径によりCTCsを血球から分離する微小経路を用いて消化管がんのCTCsの分離に取り組んだ。またCTCsの微量DNAは一旦増幅を行った後から次世代シークエンス(NGS)でゲノム解析を行うための手技を確立した。進行期の食道癌、胃癌、大腸癌を含む計20例の末梢血からCTCsの分離を試みた。末梢血1mL中のCTCsの個数は3-133個であり、全例からCTCsを分離することが可能であった。また、増幅したDNAからNGSを行い、CTCsからがん遺伝子、がん促成遺伝子変異のプロファイルの抽出に成功した。
2: おおむね順調に進展している
20例の進行消化管癌患者の末梢血検体を用いて効率のよいCTCsの分離、得られた微量DNAからNGSでのゲノム解析を行うことが可能であった。
臨床材料を用いた検討は着実に進んでいる。今後は、分子標的薬剤、特に抗EGFR抗体の投与をうける進行大腸癌患者のCTCsを継時的に集積し遺伝子解析等を行っていく。原発巣、循環細胞遊離DNA(cell-free DNA)、CTCsの遺伝子変異の比較を行う。また、マイクロマニュピュレータ―を用いたsingle cell分離を行い、メタボロミクスなどのオミクス解析の最適化を目指す。
当初購入しようとした消耗品の在庫がなく、納品が年度を超える可能性があったため。
未使用額は次年度の物品費として充てさせていただききたいと考えております。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Int J Oral Maxillofac Surg.
巻: 46(8) ページ: 968-976.
10.1016/j.ijom.2017.03.001.
Oncotarget.
巻: In press ページ: In press
腫瘍内科
巻: 19(4) ページ: 422-427
Cancer Chemother Pharmacol.
巻: Sep;78(3) ページ: 567-75
10.1007/s00280-016-3111-x.
Anticancer Res.
巻: Jul;36(7) ページ: 3531-6
J Cancer Res Clin Oncol.
巻: Aug;142(8) ページ: 1727-38
10.1007/s00432-016-2184-6.
Cancer Immunol Res.
巻: Jul;4(7) ページ: 592-9
10.1158/2326-6066.CIR-15-0298.
巻: May 31;7(22) ページ: 33165-78
10.18632/oncotarget.8890.
Br J Cancer.
巻: Apr 26;114(9) ページ: 1003-11
10.1038/bjc.2016.74.
Asian Pac J Cancer Prev.
巻: 17(2) ページ: 539-43
Cancer Sci.
巻: May;107(5) ページ: 590-600
10.1111/cas.12919.
巻: Jan 26;7(4) ページ: 4925-38
10.18632/oncotarget.6753.
Jpn J Clin Oncol.
巻: Feb;46(2) ページ: 132-7
10.1093/jjco/hyv179.
がん分子標的治療
巻: 14(4) ページ: 108-113