研究課題/領域番号 |
16K19383
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神戸 茂雄 東北大学, 大学病院, 助教 (70763233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 一酸化窒素 / 過酸化水素 / 血管内皮機能 / 内皮依存性弛緩反応 / 内皮由来過分極因子 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者らのこれまでの研究成果に基づき、内皮依存性弛緩反応における血管径に応じた一酸化窒素(NO)と内皮由来過分極因子(EDHF)の生理的バランスの意義を明らかにし、特に抵抗血管・微小循環におけるNOを介さない機序での血管恒常性の維持機構を解明することにより、血管内皮機能と密接な関係にある心血管病、特に本態性高血圧症、心不全、肺高血圧症の新たな治療戦略を開発することである。NOに依らないEDHFを介した微小循環における血管弛緩反応の重要性に着目している点に独創性があり、この目的を達成するため、「研究1. 血管径に応じたNOとEDHFの生理的バランスの意義の解明」および「研究2. 抵抗血管における血管弛緩反応の制御と臓器循環の調整機構の検討」を解明することを目指して研究に着手している。 研究1に関しては、内皮特異的caveolin-1 (Cav-1)欠損マウスにおいて、予想通り内皮依存性弛緩反応におけるNOとEDHFの生理的バランスが崩れていることが確認された。特に、微小循環におけるEDHF/H2O2反応が減弱した一方、ニトロ化ストレスが亢進しており、両者の生理的バランスの重要性が示され、現在論文投稿中である。 研究2に関しては、マウス肺循環におけるEDHFの重要性を明らかにするため、摘出肺動脈および摘出灌流肺モデルを用いた血管内皮機能の実験系確立を目指している。 本年度の研究実績に関しては、研究発表欄に記載の通り、本研究で得られた知見を2編の総説論文ならびに5つの国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に詳述するように概ね当初の計画通りに研究を進めることができている。 <研究1. 血管径に応じたNOとEDHFの生理的バランスの意義の解明> NOとEDHF/H2O2の産生および調節の重要な調節分子であるcaveolin-1 (Cav-1)を内皮特異的に欠損させたマウスの抵抗血管・微小循環レベルの血管内皮機能を検討した。抵抗血管の代表として用いた腸間膜動脈分枝ならびに冠微小循環の内皮依存性弛緩反応・過分極反応において、予想通りEDHF/H2O2反応が減弱していることが確認された。心血管系の表現型として、内皮特異的Cav-1欠損マウスは正常血圧であるにもかかわらず左室肥大が認められた。また、western blotting法によるタンパク発現解析では、腸間膜動脈および心臓組織において、一酸化窒素合成酵素の抑制的リン酸化部位であるThr495のリン酸化が低下していることが確認され、免疫組織染色では、8-nitro-cGMPの発現が亢進しており、いわゆるニトロ化ストレスが確認された。内皮特異的Cav-1欠損マウスで得られたこれらの知見をまとめ、現在論文投稿中である。 H2O2を介したEDHF反応を消失したC42SPKG1alphaノックインマウスを連携研究者であるPhilip Eaton教授から供与を受けて、心血管系の表現型解析を開始し予備的検討を行っている。 <研究2. 抵抗血管における血管弛緩反応の制御と臓器循環の調整機構の検討> 肺高血圧症の疾患モデルとして低酸素刺激モデルを採用し、摘出肺動脈ならびに摘出灌流肺でのEDHFの測定系を樹立するための条件検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
各々の研究計画について簡潔に述べる。 <研究1. 血管径に応じたNOとEDHFの生理的バランスの意義の解明> 内皮特異的Cav-1欠損マウスで得られたこれらの知見に関して、現在論文投稿中であるが、査読過程で求められる追加実験に対応し、論文化を目指す。 C42SPKG1alphaノックインマウスに関して、引き続き血管内皮機能・心血管系表現型解析を進める。 <研究2. 抵抗血管における血管弛緩反応の制御と臓器循環の調整機構の検討> 引き続き、摘出肺動脈ならびに摘出灌流肺でのEDHFの測定系を樹立するための条件検討を継続し、実験系の確立を目指す。その後、肺高血圧症の疾患モデルとして低酸素刺激モデルでの検討を進めていく。
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