研究実績の概要 |
これまでの研究で、申請者は、血清IgG4値の高値が冠動脈有意狭窄や冠動脈低輝度プラークと有意な関連があることを報告した(Sakamoto A. Clin Chim Acta, 2012; Sakamoto A. J Cardiol, 2016)。今回の検討では、IgG4と心血管病変の関連をより詳細に検討することを目指し、血清IgG4値が、冠動脈形成術後の心血管イベント発生や、弁膜症、脂質代謝パラメータと、どのような関連があるかについて解析を行った。 はじめに、冠動脈造影検査で有意狭窄を認め経皮的冠動脈形成術を行った症例を対象に、治療前の血清IgG4値と心血管イベント発生の関連を検討したところ、治療前の血清IgG4値が高値の症例では、ステント内再狭窄を含めた心血管イベント発生を高率に認め、さらにこの関連は、古典的冠危険因子と独立していることが示された。同様の検討を冠動脈CT施行症例についても行ったところ、冠動脈造影施行症例と比べて追跡期間が短いこともあり、今回の追跡期間では統計学的有意差は見られなかったが、今後、より長期間での検討を進めていきたいと考える。 続いて、血清IgG4値と、近年、症例数の増加が著しい大動脈弁狭窄の関連について検討した。その結果、血清IgG4値と大動脈弁石灰化との間には、明らかな関連を認めなかった。さらに、血清IgG4値と脂質代謝パラメータとの関連を解析したところ、血清IgG4値は、血清HDLコレステロール値、中性脂肪値、中性脂肪/HDLコレステロール比との間に有意な相関を認めた。血清IgG4値やこれらの脂質代謝パラメータの値と、冠動脈のハイリスクプラークとの間にはいずれも有意な関連が見られ、多変量解析の結果、血清IgG4値および中性脂肪/HDLコレステロール比は、いずれもハイリスクプラークに対する独立した危険因子であった。 これらの結果をとおして、冠動脈硬化やその進展に、IgG4関連免疫炎症学的機序が関与する可能性が示された。
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