研究課題
診断技術ならびに心臓外科手術の進歩により多くの成人先天性心疾患患者の予後は改善してきたにも関わらず、肺高血圧症合併ACHD患者の予後は依然として悪いことが知られている。シャント性心疾患における肺血流増加は著しい肺血管リモデリングを引き起こすが、これまでその病態機構は明らかにされて来なかった。我々は肺血流量増加と低酸素血症を合併するマウス病態モデルを構築しこのモデルを用いた解析を行った。マウスの左肺を切除した後、8.5%酸素下での低酸素飼育を行うことにより、著しい肺血管リモデリングを呈するモデル(シャント性心疾患モデル)である。このモデルは低酸素ストレスと定量性を持った右肺動脈血流増加を背景とした、臨床上のシャント性心疾患の病態を反映した病態モデルと考えられる。平成28年度は、このマウスモデルを用いて、肺血管周囲に浸潤するマクロファージをフローサイトメトリーを用いて経時的に解析した。特に血管平滑筋細胞の増殖期に集積するマクロファージに着目したところ、間質のM2マクロファージの早期浸潤が血管平滑筋増殖に関わること、間質マクロファージの除去により肺血管リモデリングが明らかとなった。平成29年度にはM2マクロファージの上流因子として好酸球に注目し好酸球→M2マクロファージ経路がシャント性心疾患モデルにおいて肺血管リモデリングを増悪させていることを明らかにした。また肺血管とともに右室リモデリングの程度を解析した。本研究では、低酸素ストレスによる炎症細胞浸潤がシャント性疾患において肺血管リモデリングを増悪させる機構の解析を通じて、炎症制御、マクロファージのM1/M2機能制御というアプローチを新たな治療法開発の一助とすることを目指す。
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International Heart Journal
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