研究課題/領域番号 |
16K19394
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
多田 隼人 金沢大学, 附属病院, 助教 (90623653)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 家族性高コレステロール血症 |
研究実績の概要 |
高LDLコレステロール血症を呈する家系に対して網羅的な遺伝子解析を行い、シトクロムP450関連分子の一種に、新規責任候補「分子X」を同定し、分子XのLDLコレステロール代謝への関与を明確とすべく、高LDLコレステロール血症を呈する別の症例群(家族性高コレステロール血症が疑われた636例)に対して本分子変異を検索し、その関連を検討した。その結果、現時点では、明らかな有害変異は同定されず、関連を明確とすることはできなかった。一方で、これらの症例群に対しては、家族性高コレステロール血症の原因分子の検索も同時に行ったところ、約79%(502例)に責任変異が同定された。また、家族歴やアキレス腱肥厚などの臨床的家族性高コレステロール血症の診断基準を満たす症例は76%(482例)認められた。また、冠動脈疾患有病は29%(185例)であった。これらの情報を元に、家族性高コレステロール血症の臨床診断基準、遺伝子変異の有無により、全体を4群に分割し、古典的冠動脈危険因子(年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙、LDLコレステロール)を調整したうえでの冠動脈疾患有病オッズを検討したところ、臨床診断基準・遺伝子変異を有する群は両者有さない群と比較し11倍以上の冠動脈疾患オッズを呈した。従って、高LDLコレステロール血症を呈する場合には、家族性高コレステロール血症を念頭に、臨床診断基準に照らし精査すること、さらには有害遺伝子変異の存在を検討することが臨床的に有用であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた、新規責任候補「分子X」のLDLコレステロール代謝への関与は現時点では明確とできていないが、高LDLコレステロール血症集団に対する遺伝子解析により、遺伝子変異の存在(解析)が、冠動脈疾患有病オッズと有意に関連することを見出した。このような情報は臨床的には極めて重要であり、今後このような高LDLコレステロール血症を呈する症例に対するマネジメントを考慮するうえで貴重なデータとなった。本内容は既に本分野での有力英文誌への報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿い、下記の基礎実験を予定する。①「分子X」遺伝子過剰発現・欠損マウスを樹立し、脂質値及び動脈硬化性病変を検討する。②安定同位体(2H3-ロイシン)を用いた代謝実験を行い、各リポ蛋白分画の生成率・異化率を算出し、「分子X」のコレステロール代謝への影響を明確にする。 また、平行し、分子Xに関して希少有害変異の同定には至らなかったが、比較的高頻度かつ効果量の小さな遺伝子変異での解析を行う(関連解析)。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝疫学的検索により分子X有害遺伝子変異を有する症例が認められなかったことにより、若干の使用額の差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
分子X変異に関するモデルマウスによる実験や安定同位体を用いた代謝実験を予定する。
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