新規の高LDLコレステロール血症を呈する家系に対して我々グループで独自に樹立した網羅的遺伝子解析(パネル解析)を行い、シトクロムP450関連分子の一種である新規責任候補「分子X」の希少有害遺伝子変異を検索した。その結果、残念ながら高LDLコレステロール血症を説明しうる分子Xの有害遺伝子変異は確認することができず、分子XとLDLコレステロールとの明確な関連を証明するには至らなかった。しかし、一方で、これらの解析の経過において、現時点では劣性遺伝性疾患の原因分子とされる有害遺伝子変異(ABCG5遺伝子、ABCG8遺伝子、アポE遺伝子、LDLRAP1遺伝子)の集積を確認し(約10%の症例)、これらの遺伝子変異の存在により、LDLコレステロール値上昇や冠動脈疾患のリスクが高まることを示すことができた。従って高LDLコレステロール血症を呈する場合には、家族性高コレステロール血症を念頭に、アキレス腱肥厚や家族歴などの臨床診断基準に照らし精査するとともに、現在家族性高コレステロール血症の原因遺伝子とされる、LDL受容体遺伝子、アポB遺伝子、PCSK9遺伝子に加えて、ABCG5遺伝子、ABCG8遺伝子、アポE遺伝子、LDLRAP1遺伝子の有害変異の存在を調査することにより、さらなる冠動脈疾患高リスク患者の抽出が可能であることを見出した。これらの成果については特許の出願に至った(特願2018- 23561)。さらに別の独立した集団に対して同様の解析を行いABCG5ないしはABCG8遺伝子に絞った状況でも同様の結果であり、日本人高LDLコレステロール血症における寄与を明確とした。
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