研究課題
Stromal cell-derived factor-1α(SDF-1α) は急性心筋梗塞や心不全などの病態下、心筋の炎症により産生され、その修復過程で重要な役割を果たすケモカインの一つである。本研究の目的は基礎実験にて報告されているSDF-1αの、循環器疾患における臨床的意義について明らかにすることである。平成30年度はこれまで当院に入院した循環器疾患患者から収集した血液サンプルのSDF-1α値をELISAにて測定し解析した。その結果、慢性冠動脈疾患患者の末梢血SDF-1αの高値群は、短期間の推算糸球体濾過量(eGFR)の低下と関連していることが分かった。そのための末梢血SDF-1α値は短期間の腎機能低下の予測因子であることがわかった。この結果を査読付き英文雑誌にて報告した(Clin Exp Nephrol 2019, in press).基礎実験において心臓以外にも様々な臓器でSDF-1αの産生が報告されているが、腎臓においてもSDF-1αが産生され、腎機能障害との関連が報告されていた。今回の結果は基礎実験で示されているSDF-1αと腎機能障害との関連が、臨床においても確認されたこと考えられる。またこれまで、SDF-1αと心疾患の関連について報告していたが、今回腎不全との関連が明らかになったことで、SDF-1αが心腎連関において重要な役割をしていることが示唆される。今回の研究において、循環器疾患において様々な観点からSDF-1αのマーカーとしての重症性を示すことができたが、今後さらに多くの症例や、異なる患者背景の症例で確かめていく必要がある。
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Clinical and Experimental Nephrology
巻: in press ページ: in press
10.1007/s10157-019-01722-9
https://yamanashi-2nai.com/