研究課題
エーラスダンロス症候群(EDS)は、皮膚や関節の過進展性と各種組織の脆弱性を特徴とする疾患である。近年報告された筋拘縮型EDS(mcEDS)では、CHST14遺伝子の変異によるデルマタン4-O-スルホトランスフェラーゼ-1の活性消失を原因として、結合組織でのコラーゲン細線維の集合不全などが認められる。mcEDS患者では、軽微な外力で巨大な皮下血腫を生じ重篤な出血に至る症状が認められ、病態メカニズムの解明と治療法の開発が急がれている。申請者はこれまでに、Chst14遺伝子欠損(KO)マウスを用いたmcEDSの病態解明研究に取り組んできた。しかし、Chst14ホモKO(Chst14-/-)の殆どが周産期致死となり成獣での解析が困難であったことから、本研究では、胎仔・胎盤を用いた解析と、出生率改善方法の検討を行った。その結果、Chst14-/-胎盤において、胎盤重量減少や絨毛膜板の血管構造異常、透過型電子顕微鏡による観察から毛細血管基底膜の菲薄化や断裂が生じることを発見し、その成果は2018年2月にGlycobiology誌に掲載された。また、BALB/c系統に戻し交配をすることでChst14-/-の出生率が改善することを発見し、2020年5月にExperimental Animals誌にAcceptされた。さらに、CRISPR/Cas9によるゲノム編集によってChst14 floxマウスを独自に作出し、コンディショナルKO(cKO)マウスを樹立した。以上の結果から、Chst14遺伝子が血管の構造や機能維持に重要であることが明らかとなり、mcEDSにおける巨大皮下血腫等の血管合併症との関連性が示唆された。また、Chst14-/-の出生率改善や、Chst14 cKOマウスの樹立に成功したことで、今後のmcEDS研究発展への貢献が期待される。
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Genes
巻: 11(1) ページ: -
10.3390/genes11010043
Experimental Animals
巻: - ページ: -
http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.OCyUumkh.html