研究課題
現在行われている骨髄幹細胞や骨格筋芽細胞、心臓幹・前駆細胞といった幹細胞移植治療の現状としては、心機能改善効果に対して、一部良好な結果をもたらしている治療もあるが、基本的には心筋への分化能の低さのため、真に心筋を再生する治療とはいえないのが問題である。そこで、ヒトiPS細胞から誘導した心筋前駆細胞を検討した。しかし、今までに報告されている前駆細胞は生体内への移植において心筋細胞よりも血管系に分化する傾向を示すと考えられ、移植において高効率に心筋へ分化する前駆細胞を新たに同定する必要があった。そこで、我々は、ヒトiPS細胞から心筋細胞へ分化する分化誘導法を用いて経時的な遺伝子変化を解析したところCD82を表面マーカーとする心筋特異的前駆細胞の同定に成功した。CD82陽性心筋特異的前駆細胞は免疫不全マウスの腎被膜下ならびに心筋梗塞心に移植したところ、移植した前駆細胞由来の約95%の細胞が心筋細胞に分化するという極めて高い効率を示した。そこで、免疫不全ラットを用いた亜急性期心筋梗塞モデルラットに200万個のCD82陽性心筋特異的前駆細胞を移植したところ1か月の観察期間で心機能改善効果を認めた。また、CD82陽性心筋特異的前駆細胞を前駆細胞の状態で維持し、増幅できるかを今までに報告されたgrowth factorやinhibitorのコンビネーションで検討したが、現段階では維持、増幅することはできなかった。
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Cell Reports
巻: 22 ページ: 546-556
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2017.12.057