研究実績の概要 |
現在利用可能である肺血管内皮細胞と体血管内皮細胞の網羅的遺伝子発現プロファイルと、肺血管平滑筋細胞と体血管平滑筋細胞の網羅的遺伝子発現プロファイルについて、コンピュータ上で比較し、有意に肺血管細胞にて発現上昇している遺伝子をピックアップした。それらの中で、これまでの発現部位報告から有望そうである遺伝子を選択し、さらにそれらの中から、その遺伝子がコードするタンパク質を認識する特異的抗体が市販で利用可能である遺伝子を選びだした。それぞれ、肺血管内皮細胞と肺血管平滑筋細胞について、まずは候補遺伝子を1つずつ選びだして、ヒト肺組織凍結切片を用いて、免疫組織染色にて発現の有無を実際に確認した。まず、肺血管内皮細胞特異的マーカー候補として同定した遺伝子A,B,Cの3種を同定したが、それらがコードするタンパクについては、実際にヒト肺組織における肺血管内皮細胞で発現していることが確認できたが、ヒト体血管内皮細胞でも発現していることが確認され、いくぶんか染色の濃度の違いは認められるものの、真のマーカーとして適切であるかどうかは疑問の残る結果であった。一方で、肺血管平滑筋細胞特異的マーカー候補として同定された遺伝子X,Yがコードするタンパク質は、実際にヒト肺組織を用いた免疫組織染色を行うと、染色が確認できなかった。遺伝子Zについては、体動脈でも発現が確認されたため、マーカーとしては利用不可能であった。 また、ヒト肺組織から、肺血管をレーザーマイクロダイセクションにて選択的に回収し、そこからRNAを抽出したが、いくつかのサンプルはマイクロアレイによる遺伝子解析には不十分なクウォリティであるため、RNAのクウォリティを上げる工夫を行っている。
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