研究実績の概要 |
平成28年度は血管病変において増加しているSirt7 の役割を解明するために,Sirt7 ノックアウトマウスを用いて血管障害モデルを作成し研究を行った.野生型マウスおよびSirt7ノックアウトマウスに対してワイヤー挿入による大腿動脈内膜剥離を行い、血管内皮障害モデルを作成した。28 日後に新生内膜増生をHE 染色にて評価した.その結果,Sirt7ノックアウトマウスでは野生型マウスに比較し、新生内膜の増生が有意に抑制されていた.またBrdU染色による評価では,Sirt7ノックアウトマウスの新生内膜では野生型マウスと比較して細胞増殖が抑制されていることを見出した. さらにSirt7の血管病変に及ぼす影響の分子機序を解明するために,新生内膜や動脈硬化巣の形成の中心的役割を果たす血管平滑筋細胞を用いた検討を行った. 野生型マウス、Sirt7ノックアウトマウスよりそれぞれ初代培養した血管平滑筋細胞(VSMCs)を用いた実験において,野生型マウス由来のVSMCsに比較して,Sirt7ノックアウトマウス由来VSMCsは血清刺激による細胞増殖が低下していた。またボイデンチャンバーを用いた評価ではSirt7由来VSMCsでは野生型マウス由来VSMCsに比べ,遊走能が低下していた. これらの所見はSirt7が細胞増殖を制御することにより新生内膜増生を制御することを示唆する所見である.平成29年度はSirt7による細胞増殖制御機構を分子レベルで詳細に検討する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は動物モデルを用いた検討を引き続き行うとともに、ヒト血管平滑筋細胞を用いてsiRNA およびアデノウイルスを用いたSirt7 のgain- and loss-of function の検討も行う. われわれは予備検討で,Sirt7 が細胞周期制御タンパクであるCyclin D1 やCDK4 の発現に影響を与える可能性を見出しており.その機序のひとつとしてがん抑制遺伝子であるp53 が関与している可能性を考えている(Pharmacol Res. 2008). Bober らは,Sirt7 はp53 の脱アセチル化を介してp53 の活性を制御していると報告しており(Circ Res. 2007),Sirt7 のp53 を介した細胞周期制御機構を明らかにする.
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