研究実績の概要 |
血管病変において増加しているSirt7 の役割を解明するために,Sirt7 ノックアウトマウスおよび平滑筋特異的Sirt7ノックアウトマウスを用いてワイヤー挿入による大腿動脈内膜剥離を行い、血管内皮障害 モデルを作成した。その結果,Sirt7ノックアウトマウスおよび平滑筋特異的Sirt7ノックアウトマウスではコントロールマウスに比較し、新生内膜の増生が有意に抑制されていた。またBrdU染色による評価では,Sirt7ノックアウトマウスの新生内膜では野生型マウスと比較して細胞増殖が抑制されていることを見出した。さらにSirt7の血管病変に及ぼす影響の分子機序を解明するために,新生内膜や動脈硬化巣の形成の中心的役割を果たす血管平滑筋細胞を用いた検討を行った。野生型マウス由来のVSMCsに比較して,Sirt7ノックアウトマウス由来VSMCsは血清刺激による細胞増殖が低下していた。またボイ デンチャンバーを用いた評価ではSirt7由来VSMCsでは野生型マウス由来VSMCsに比べ,遊走能が低下していた。またその機序として細胞増殖に関与するmiRNA(miR290-miR295)がSirt7ノックアウトマウス由来血管平滑筋細胞において増加することを見出している。さらに平成30年度には小胞体ストレスが動脈硬化や平滑筋の増殖を亢進させることに注目し、Sirt7による平滑筋の増殖や遊走能制御に小胞体ストレス応答が関与すると仮説を立て検証を行った。小胞体ストレスを誘導する、ツニカマイシンの投与で増加するXBP1sの発現はSirt7ノックアウトマウス由来のVSMCsにて有意に減少することを見出した。これらの所見によりSirt7がmiRNAや小胞体ストレス応答を制御することにより血管平滑筋増殖を制御すること考えられる。
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