研究課題/領域番号 |
16K19412
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
花谷 信介 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40755443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイオカイン / フレイル / サルコペニア |
研究実績の概要 |
本年度は新規マイオカイン候補としてピックアップした因子のうち、heme oxygenase-1(HO-1)に着目し、その病的意義を検討した。HO-1は骨格筋重量を増加させたマウスの骨格筋で発現が上昇しており、またその阻害剤を用いることで骨格筋肥大マウスにおいて認められた他臓器への保護作用のいくつかがキャンセルされることも明らかとなった。これらの結果は、本研究課題で着目しているフレイルの病態において、HO-1のような骨格筋由来のサイトカインが減少し、それが他臓器での有害事象につながることを示唆するものと考えられる。なお、骨格筋組織で発現が増加するHO-1であるが、骨格筋組織には骨格筋細胞のみならず血管内皮細胞や炎症細胞など様々な細胞が混在している。我々は当初骨格筋細胞でHO-1の発現が増加すると考えていたが、in vitroの研究および骨格筋特異的ノックアウトマウスの解析から、非骨格筋細胞で発現が増加する可能性を明らかにした。今後、この組織特異的ノックアウトマウスや骨格筋以外の細胞培養実験などで詳細を明らかにし、本研究の目的である高齢大動脈弁狭窄症患者のフレイルを反映するマーカーとなり得るかを検討する予定である。 また、臨床面では当施設へ入院した大動脈弁狭窄症を含む心疾患患者のデータベース作成を行っているところである。入院の後、一般的な術前精査と並行して日常生活における活動度などについての問診や、筋力としての握力測定や筋量を反映する下肢周囲径などの測定を行い、これらのパラメータを包括したデータベースとすべく現在データ収集を進めている。なお、この過程で申請者はフレイルの主要な病態基盤であるサルコペニアを予測する簡易スコアに着目し、そのスコアが高値である患者群は将来の心血管イベント発生が有意に多いことを明らかにし、現在論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規マイオカインのスクリーニングと臨床データベースの作成を並行して進めている。新規マイオカインについては、候補因子の絞り込みを現在も行っており、新たにターゲットとする因子が明らかになる場合は、予定の研究期間が延長となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続き新規マイオカインのスクリーニングを行っていく。現在候補として考えている因子のいくつかは市販のELISA測定系が存在するものがあり、候補因子として有力と考えられた場合は測定キットを購入し、臨床検体(血液)を用いて血中濃度測定を行っていく。 また、臨床データベースについては、これまで申請者が構築してきたものに加え、当院心臓血管外科とも協力し、手術関連合併症などを含むさらに詳細なデータベースへとブラッシュアップを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規マイオカイン候補スクリーニングにかかる試薬類の支出が、マイオカイン候補の数が想定より少なかったこと、およびELISA測定系確立のための抗体作成費用が、市販のELISAキットを購入する予定としたことから不要となったこと、などにより次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は前述の理由にてELISA測定系の購入が想定より多くなると考えており、次年度使用額分はその費用に充てる予定である。
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