急性冠症候群発症の機序として冠動脈プラーク破裂後の血栓形成が関与しており、破綻した冠動脈プラークの多くは無症候性に経過することが知られている。従って、どのような因子が、冠動脈プラーク破裂後の急性冠症候群発症に関与しているかを解明することは臨床的に非常に重要である。そこで我々は、急性冠症候群の発症機序と炎症性細胞である特定の単球サブセットとの関係性について検討する研究を行った。 急性冠症候群発症の機序に関して炎症性細胞である特定の単球サブセットとその細胞表面マーカーであるTLR-4および病変局所の炎症および血小板との相互作用(P-selectinとその受容体であるPSGL-1)により、冠動脈内の血栓形成を促進するマーカーであるPSGL-1を測定した。急性心筋梗塞発症の責任冠動脈病変を光干渉断層装置(OCT)で観察し、プラーク破裂や血栓像の有無と特定の単球サブセットおよびその細胞表面マーカーであるTLR-4、PSGL-1との関係性を検討した。 その結果、急性冠症候群の特定の単球サブセット上に発現するPSGL-1およびTLR-4が有意に上昇しており、特に急性心筋梗塞患者において有意に高かった。また末梢血と冠動脈局所血で比較した場合、冠動脈局所において特定の単球サブセット上に発現するPSGL-1およびTLR-4が有意に高かった。また、OCT画像との比較・検討ではプラーク破裂および血栓像を認めた患者において特定の単球サブセット上に発現するPSGL-1およびTLR-4が有意に上昇している結果であった。 今回の研究で急性冠症候群発症後は特定の単球サブセットとその表面に発現するPSGL-1が上昇することがプラーク破裂後の血栓形成に関与していることが明らかとなった。 これらの結果は論文掲載にて報告した。
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