研究課題/領域番号 |
16K19422
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
坂田 飛鳥 自治医科大学, 医学部, 助教 (90528457)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血小板 / microRNA / 血小板機能解析 |
研究実績の概要 |
本申請研究は血小板のmicroRNAを介した白血球,血管内皮,巨核球への情報伝達システムを仮定し,その証明とmicroRNAを利用した新たな抗血栓・抗炎症治療の開発を目的としている. 今までに①ヒト血小板内のRNA量をフローサイトメーターを用いて簡便に定量できる手法を実現し,②血小板内のRNAが血小板老化,周辺環境,活性化に応じて減少することを明らかとした.さらに③血小板内に残存するRNA量と血小板の活性化能に相関があることを明らかとし,本手法の簡便な血小板機能解析としての可能性を見いだした.④活性化に伴う血小板内RNA減少は血小板の可逆的な活性化後にも確認された.⑤高解像度二光子顕微鏡を用いた検討ではマウス体内における血小板の活性化状態を評価出来る手法を構築し,⑥血管障害部位で血小板が可逆的活性化後に流血中を循環する様子を確認した.実臨床の患者血液中で,こうした血小板の存在をRNA定量により明らかとすることが出来れば心筋梗塞などの高リスク患者発見に役立つ可能性がある.⑥二光子顕微鏡を用いた血小板内RNAの量的多寡の可視化にも成功しており,生体内での血栓形成部位での評価を現在行っている.血小板内RNAを回収し定量すると,当初の想定どおり,⑦血小板老化や活性化に伴い減少するRNAの主体がmicroRNAであることが確認できた.⑧血小板microRNA選択的な抽出条件を構築し,⑨シークエンスによる配列同定のために必要な量のmicroRNAを,血小板活性化群,血小板老化群,コントロール群の各群から回収,純化できたため,現在シークエンス解析のためのサンプル調整を行っている.microRNAの機能解析は配列からのデータベース解析とともに,合成RNA投与による細胞および生体での解析を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りフローサイトメーターを用いた血小板内RNA量の評価手法構築に成功した.さらに血小板内のmicroRNAが活性化や血小板老化に伴い減少することを明らかとした.RNA量と血小板の活性化の履歴,血小板活性化能には関連が示唆され,当初の想定とは異なる臨床への応用の可能性が見いだせた. 血小板外に放出されたRNAの可視化,回収には未だ技術的な問題があるが,血小板内のmicroRNAの回収,純化に成功しており,増減のあったmicroRNAを次世代シークエンサーにより同定,定量することにより問題克服ができる.
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今後の研究の推進方策 |
血小板から回収,純化したmicroRNA配列と量の増減を次世代シークエンサーにより解析する.同定したmicroRNAの機能はデータベース解析と合成したRNAの細胞および生体内への投与により明らかとする.microRNAおよびmicroRNAの総補的配列を用いた治療の可能性を血管内皮障害,炎症モデルマウスを用いて証明する.さらに,本年度の研究成果として得られた,血小板機能解析,血栓症高リスク患者層別という新たな臨床応用の可能性に関して動物モデルを用いて解析を進める.現在までに得られている知見に関して国内学会での発表を予定している.
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