慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、右心不全を発症しうる予後不良の疾患であった。外科治療や近年我々の施設を中心に飛躍的に発展している経皮的肺動脈形成術(PTPA)により、治療内容は飛躍的に発展しているが、その発症機序に関しては未だ未解明である。CTEPHの発症には、遺伝的背景だけでなく、microRNAsの関与の報告や、サイトカインの影響など、多くの因子が複雑に寄与していると推測される。本研究では、我が国におけるCTEPH治療の拠点病院である杏林大学病院と慶應義塾大学病院との共同研究体制によって、形態学的アプローチ・手術後組織を用いた病理学的および分子生物学的アプローチ・サイトカインやmicroRNA測定等によるエピジェネティクス解析アプローチを、多角的に組み合わせた集学的アプローチを実施し、CTEPHの病態を解明し予後改善と治療法発展を目的とするものである。 本研究では、肺高血圧症患者検体として約400検体を既に収集しており、国内最大の肺高血圧症バイオバンクを構築済みである。うち、CTEPHは約150検体存在しており、CTEPH患者検体を用いた解析によって、血中ビタミンD濃度やアディポネクチン濃度がCTEPH患者の臨床指標と相関すること等を解明した。現在は、CTEPH患者サンプルを用いたオミクス解析を進行中である。
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