研究課題
1. 多能性幹細胞からの中胚葉・心臓中胚葉誘導因子のスクリーニング(前年度に済)2. X因子発現制御マウスES細胞を用いた中胚葉・心筋誘導の確立(前年度に済)3. X因子発現による心臓中胚葉誘導の分子生物学的機序の解明(前年度に済)4. X因子発現制御によるマウスES細胞からの骨格筋・軟骨誘導の確立:中胚葉誘導制御因子Xは、心筋誘導においては誘導が抑制される骨格筋との関連も知られている。発生学では中胚葉から心臓が分化した後に、骨格筋・軟骨の原基である沿軸中胚葉が分化する事から、X因子発現の期間を延長することで、幹細胞から沿軸中胚葉を誘導できると考えた。そして誘導開始から数日間のX因子発現により幹細胞から沿軸中胚葉が誘導され、骨格筋・軟骨への分化を確認した。以上の結果から、X因子が心臓中胚葉だけでなく、骨格筋も誘導可能な中胚葉誘導制御のマスター因子である可能性が示唆された。その分化誘導の機序としてX因子を介したシグナル経路の活性化であることを解明した。5. X因子発現制御ヒトiPS細胞を用いた中胚葉・心筋誘導の確立:X因子は哺乳類に広く保存されている転写因子である。そこでX因子による中胚葉誘導がヒトにおいても保存されていることを確認するため、ヒトiPS細胞に同様の手法でX因子遺伝子を導入した。ヒトiPS細胞においてもX因子発現のみで、中胚葉・心血管系細胞の誘導を確認し、幹細胞におけるX因子の役割が種を越えて保存されていることを確認した
1: 当初の計画以上に進展している
近年、液性因子を用いた幹細胞からの中胚葉誘導において新たな知見が報告され、幹細胞から分化した中胚葉は液性因子の作用により目的外系統への分化が阻害される事で、心臓中胚葉(心臓幹細胞)、または沿軸中胚葉(骨格筋・軟骨の原基)への分化が選択されていることが判明した。(Kyle et al, Cell, 2016)しかし未だ液性因子の下流に存在する転写因子ネットワークなどの分子生物学的な機序は不明である。本研究においては、分化制御の鍵となる転写因子を同定し、機能を解析している点が、先行研究と一線を画しているだけでなく、X因子の直接結合による液性因子の誘導効果を示していることから、従来の研究ではブラックボックスであった液性因子の分子生物学的機序を埋める可能性がある研究といえる。
X因子Creトランスジェニックマウスを用いた生体内での細胞系譜解析:既存の報告では、X因子発現細胞に関してCre-loxPシステムを用いた詳細な細胞系譜解析は存在しない。そこで我々はCRISPR-Cas9システムを用いて、X因子 Creトランスジェニックマウスを作製中である。現時点ではノックインに必要なベクターの設計が完了し、マウス胚への導入を施行済みである。本マウスが作成されれば、これまでは詳細が不明であった、発生分化初期からのX因子発現細胞の運命が解析可能となり、生体内でのX因子と中胚葉発生・筋骨格系誘導との関連についての解析が飛躍的に前進する事が予想される。
現在、作成中のトランスジェニックマウス作成が次年度までかかるため、次年度使用額が生じました。
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