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2016 年度 実施状況報告書

iPS細胞の質を改善する新規樹立方法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K19429
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

國富 晃  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30570882)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードiPS細胞 / リンカーヒストンH1
研究実績の概要

iPS細胞は分化細胞に4つの転写因子(Oct4,Sox2,Klf4,c-Myc)を導入することにより樹立され,現在iPS細胞を用いた様々な臓器再生の臨床応用が期待されている.しかしながら現状ではマウス,ヒトともにiPS細胞の樹立効率は低く,かつ樹立された細胞の分化能力などの幹細胞の性質も不均一であることがiPS細胞の臨床応用における重大な問題点となっている.当研究では卵母細胞特異的リンカーヒストンH1であるH1fooを上記転写因子と共に分化細胞に導入することで,従来の樹立方法と比較してより質の高いiPS細胞をマウスおよびヒト分化細胞から効率的に樹立することを目的としている.本年度においてはマウスでの実験系を進めることで以下の知見を得た.
レトロウイルスベクターを用いてOct4,Sox2,Klf4の3つの転写因子およびH1foo(以下OSKHと略記)をマウス尾部線維芽細胞に強制発現させることによりiPS細胞を樹立した.Nanog-GFPトランスジェニックマウスを用いた実験系において,H1fooを追加することによりNanog陽性iPS細胞の樹立効率が飛躍的に改善した.またH1fooはiPS細胞へのリプログラミング時に生じうる異常メチル化を抑制していた.OSKHを用いて樹立したiPS細胞は,OSKのみで樹立したiPS細胞と比較して,より高くかつクローン間で均一な分化能を有することを,胚様体形成能およびアグリゲーション法によるキメラマウス作製において確認した.これらの結果から,マウスの実験系においてH1fooは高品質のiPS細胞をより高効率に樹立するとの結論に至り,本研究成果を学術論文にまとめ,受理された(Kunitomi A., Stem Cell Reports. 2016).

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度はH1fooがより高品質のiPS細胞をより高効率に樹立することをマウスの実験系で示し,その成果を学術論文にまとめ受理されるまで達成することができた(Kunitomi A., Stem Cell Reports. 2016).但し初年度の研究計画として挙げた網羅的解析手法を用いたH1fooがリプログラミングに及ぼすメカニズムの解明については現在鋭意解析中であり完了していないため,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.

今後の研究の推進方策

マウスで得られた結果を元に,ヒトのiPS細胞樹立においてもH1fooが同様の効果を発揮するかについて検証を進める.再生医療への臨床応用を視野に入れ,ベクターは染色体へのゲノム組み込みによる挿入変異や染色体の構造変化を惹起するおそれのないセンダイウイルスベクターを用いる.現状では既にH1fooセンダイウイルスベクターは構築済みであり,Oct4,Sox2,Klf4,L-Myc(以下OSKLと略記)と共にH1fooをヒト分化細胞に強制発現させてヒトiPS細胞を樹立する.ヒトiPS細胞の樹立効率をOSKLのみの場合と比較すると共に,樹立iPS細胞のトランスクリプトーム解析を行いその特性の違いも比較検討する.また近年よりマウスiPS細胞に近い未分化状態を達成していると考えられているナイーブ型ヒトiPS細胞の樹立にもH1fooを用いてその効果を検証する.

次年度使用額が生じた理由

・参加を予定していた学会へ都合により参加できなかったため。
・予定していたChIP-seq, ATAC-seqなどの網羅的解析が次年度に施行することとなり、そのために使用する試薬および解析費用を次年度に使用することとしたため。

次年度使用額の使用計画

・学会発表に際して旅費を使用する。
・次年度においてChIP-seq、ATAC-seqさらに追加でRNA-seqを複数の検体で施行予定であり、試薬および解析費用に使用予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] H1foo Has a Pivotal Role in Qualifying Induced Pluripotent Stem Cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Kunitomi A., et al.
    • 雑誌名

      Stem Cell Reports

      巻: 6(6) ページ: 825-833

    • DOI

      10.1016/j.stemcr.2016.04.015.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 卵母細胞特異的リンカーヒストンH1fooによる高品質iPS細胞の樹立2017

    • 著者名/発表者名
      國富晃
    • 学会等名
      第16回 日本再生医療学会総会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2017-03-09
  • [学会発表] H1foo has a pivotal role in qualifying induced pluripotent stem cells2017

    • 著者名/発表者名
      國富晃
    • 学会等名
      第5回 IRG meeting
    • 発表場所
      品川プリンスホテル(東京都港区)
    • 年月日
      2017-01-07
  • [学会発表] 卵母細胞特異的リンカーヒストンH1fooによる高品質iPS細胞の樹立と心筋分化への応用2016

    • 著者名/発表者名
      國富晃
    • 学会等名
      第20回 日本適応医学会学術集会
    • 発表場所
      東京コンベンションホール(東京都中央区)
    • 年月日
      2016-12-17
  • [学会発表] 卵母細胞特異的リンカーヒストンH1fooによる高品質iPS細胞の樹立2016

    • 著者名/発表者名
      國富晃
    • 学会等名
      第39回 日本高血圧学会総会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-10-02
  • [学会発表] H1foo has a pivotal role in qualifying induced pluripotent stem cells2016

    • 著者名/発表者名
      Kunitomi A
    • 学会等名
      Cell Symposia
    • 発表場所
      Berkeley, CA, USA
    • 年月日
      2016-09-26
    • 国際学会
  • [学会発表] 新規クロマチンリモデリング因子H1fooによる高品質iPS細胞の樹立2016

    • 著者名/発表者名
      國富晃
    • 学会等名
      Molecular Cardiovascular Conference II(2016)
    • 発表場所
      東京ドームホテル(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-09-03
  • [備考] iPS細胞を高品質かつ高効率に作製することに成功

    • URL

      https://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2016/osa3qr000001q0lk.html

  • [産業財産権] 高品質なiPS細胞の製造方法2016

    • 発明者名
      湯浅慎介、福田恵一、國富晃
    • 権利者名
      湯浅慎介、福田恵一、國富晃
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2016/003282
    • 出願年月日
      2016-07-11
    • 外国

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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