本研究では成人先天性心疾患において以下の研究結果を報告する。①サルコペニア(サルコペニア肥満を含む)の頻度と特徴:健常若年者と比較し高頻度にサルコペニア(サルコペニア肥満を含む)を認めた。②サルコペニア・サルコペニア肥満の原因となる慢性炎症サイトカイン・摂食ホルモンの異常の有無:特にチアノーゼ性先天性心疾患において炎症マーカーの上昇を認めた。摂食ホルモンのグレリンの低下を認め、ホルモンによる食欲促進は成人期先天性心疾患患者においては認めなかった。しかしグレリンは心保護作用もあり、心不全に対してはマイナスの影響を及ぼす可能性が示唆された。③成人先天性心疾患患者の食事摂取の内容の傾向の把握:十分なカロリーは摂取しているが、野菜の摂取が多く、動物性蛋白はやや少ない傾向にあった。また、塩分摂取は男性にてやや多い傾向を示し、若年成人先天性心疾患患者においても食事指導が重要であることが示唆された。さらに成人先天性心疾患におけるサルコペニア(サルコペニア肥満を含む)の改善方法として、④筋肉レジスタンストレーニング(preliminary study)として2か月間のホームエクササイズを施行し、筋肉量・基礎代謝量・浮腫率・心不全マーカーの改善を確認した。レジスタンストレーニング+適切なアミノ酸摂取群においては上記のような改善を認めたが、アミノ酸摂取のみでは改善なく、成人先天性心疾患においても筋肉レジスタンストレーニング+適切なアミノ酸摂取が望ましい結果であった。
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