研究課題/領域番号 |
16K19436
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
渡辺 一広 山梨大学, 総合研究部, 病院助教 (50535549)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分泌性ホスホリパーゼA2 / 大動脈解離 / Angiotensin II / 細胞外マトリックス |
研究実績の概要 |
本研究は、大動脈疾患に関わる細胞外分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)を網羅的に探索し、当該sPLA2の病態における作用メカニズムを分子レベルで解明することを目的とする。 初年度の実験計画に従い、各種sPLA2アイソザイムの遺伝子欠損マウスにAngiotensinⅡを持続皮下投与したところ、sPLA2-V遺伝子欠損マウスでのみ大動脈解離を高率に発症することを確認した。免疫染色にて大動脈血管内皮細胞にsPLA2-Vの染色像を認めた。また、マウス大動脈よりCD31陽性細胞を単離してqPCRを行い、sPAL2-VのmRNAが大動脈内皮細胞に発現していることを確認した。 Lysyl oxidaseは細胞外マトリックスの架橋を促進することで動脈の恒常性維持に寄与し、大動脈解離の病態においても重要な役割を果たしていることが知られている。sPLA2-V遺伝子欠損マウスでは、AngiotensinⅡ投与後の大動脈組織において、このLysyl oxidaseのmRNA発現、タンパク発現、酵素活性が抑制されていることを見出した。それに伴い、sPLA2-V遺伝子欠損マウスのAngiotensinⅡ投与後の大動脈組織ではCollagenの架橋が抑制され、可溶性Collagenに対する非可溶性Collagenの割合が低下していることが確認された。以上より、sPLA2-V遺伝子欠損マウスではLysyl oxidaseが低下し、細胞外マトリックスの架橋が抑制されているため、大動脈壁が脆弱となり、結果としてAngiotensinⅡ投与に伴う大動脈解離が高率に発症するものと考えられる。 今後は、培養細胞を用いた実験系やリピドミクス(脂質の網羅的質量解析)を駆使して、上記のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動脈解離に関与する細胞外分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)のアイソザイム(sPLA2-V)を特定することができた。さらに、sPLA2-Vの大動脈組織において細胞外マトリックスの架橋が抑制されていることが明らかとなり、sPLA2-Vと大動脈解離病態の関連の一端をとらえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で、細胞外分泌性ホスホリパーゼA2遺伝子欠損マウスにおいてLysyl oxidaseが低下し、細胞外マトリックスの架橋が抑制されていることが明らかとなった。今後は、培養細胞を用いた実験系において、その分子レベルのメカニズムを明らかにしていく。また、リピドミクス(脂質の網羅的質量解析)を行って責任脂質を特定する。
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